4、転機
「グギャアッ、ゲギャアッ!」
仲間たちの叫び声に剣戟の音。
尤も彼がゴブリンたちを仲間などと思ったことは一度もなかったのだが。
――やっぱりか、大規模な討伐隊が組まれたんだな……。流石にこっちには来ないよな? それに『隠蔽』もかけてあるし……。
だが所詮はスクロールの隠蔽だろう。熟練の魔法使いにはその対処法もあるに違いない。
――こっちに来るなよ、こっちに来るなよ。来ても気付いてくれるなよー……。
彼は祈るような気持ちで自分のために整備した洞窟で縮こまる。
そのうちに、
「グギャアアアッ!」
「あぁっ! シルヴィア隊長っ!」
「グギャアァアアッ!」
「くそぉっ、くそぉおおーッ!」
――なんだ、何か分からんけど人間が叫んでる? ってかどんどんこっちに近づいて来てねぇかよ!
「グギャアアアッ!」
「ぐぅッ、止めなさいっ、このぉっ! きゃああっ!」
――……これ、間違いなく女性の声だよなぁ……。ってことは、誰かゴブリンに攫われたのか? ……それにグギャゲギャ言ってる方も聞き覚えのある声だしなぁ……。くそぉ、どうするか……。
もしも声の主があのホブラックゴブリンであれば自分が太刀打ちなど出来る筈もない。……が、
――もしも女性を襲うことに夢中になっていたら、ワンチャン……よしっ!
彼は決意した。
奴に理不尽に殴られ虐げられてきたゴブリン生の恨みもあったし、何よりも今は女性を助けねばとも思っていた。
――それにあいつ、俺の勘違いじゃなかったら、俺の母親食ったんだよな……。
その部分はお互いにゴブリンであれば仕方のないことだと思わなくもない。が、
――チャンスならやらないと。ここを逃したら俺はあいつにずっと負け続けることになってしまう!
意を決した彼は幾つもの〝道具〟を手に洞窟をそっと抜け出す。
そして見るのである。
――うわぁ、もう鎧もバキバキに剥がされて……おっ、おっぱ、デカぁ……。それに先っぽも薄ピンクで綺麗で……暴れてぷるぷる動いて……ゴクリ。
ムクムクと、ゴブリンの本能が刺激された。
――いやっ、今はそんな場合じゃない。
グッと自身で克己して、ホブラックゴブリンの後ろからそっと近づく。奴が粗末な腰布を外し、その汚いモノを女騎士に近づけた時、
――今だッ!
『火球』のスクロール!
「ゴギャアッ!?」
――よしっ! いやっ、まだ浅いか? ここは出し惜しみなしだっ!
彼は保存していたスクロールを次々と使用すると、ホブラックゴブリンへと当て続けた。そのうちに抵抗が弱くなっていくのを感じ、
「グギャアッ!」――いつまでのし掛かってんだよこのゲス野郎が! おっかさんの仇ぃいッ!
ゴブリンの膂力ながら、鍛えていた彼はそれなりに成長していた。そして『身体強化』のスクロールだ。
「グボギャアアッ!」
――よしっ、やった、やってやったぞぉおっ!
吹き飛ばされピクリとも動かなくなったホブラックゴブリンに、彼ははじめての勝利の雄叫びを上げるのである。
「グギャアアアーーッ!」
◇◇◇
「グギャ……」――それで、この女騎士だよな……。
彼が視線を向けた先にはホブラックゴブリンに攫われてきた女騎士が横たわっていた。
美人であった。波打つような金髪は今は土と血にまみれ、頬には殴られたに違いない痕があった。それでも分かるほどには美人であって、鎧を剥がされ剥き出しにされた乳房は白く大きく柔らかそう。その頂の薄桃色には思わず吸い付いてしまいたい。
改めて見ても魅惑的な女体であって、あられもない姿で横たわる彼女にはゴブリンの本能がムクムクと刺激させられた。
――……このまま一思いに……。いやいや! 駄目だ! 俺はゴブリンだけど中身は人間なんだっ! …………よし、イッパツヌいてから対処しよう。
そうしよう。
彼はイッパツではすっきりしなかったので、何度もヌいてから彼女を洞窟へと運び込んだ。その際にも柔らかな感触や、戦臭に混じる彼女の甘いに匂いに刺激されて、たいへんだった。彼女を運び入れるまでに何度ヌいたか覚えていない。
――流石はゴブリンの性欲……。彼女の触れるたびに即チャージされやがるぜ……。
ちなみに再び彼女に触れる際には毎度手は洗った。唇を噛み、血を流して我慢しながら彼女の鎧を外し、汚れを清め、枯れ草の上に毛皮を敷いたベッドへと寝かしつけた。ホブラックゴブリンにやられたのか、それまでの戦闘で負ったのかは分からなかったが、怪我をしていたので傷薬も、湿布も貼って包帯も巻いた。その際に柔らかい箇所に触れたのは不可抗力と言ったら不可抗力である。
――はぁっ、はぁっ、なんとか終えたぜ……。正直狩りよりも疲れた……。結構血も流したし、
ふぅ……。と彼は息を吐くと、
――あっ、そうだ。すぐにはまだ動けないと思うけど、俺が助けたって言っても俺はゴブリンだからなぁ。……言葉も通じないだろうし。剣とか刃物類は隠して置いて、と……鎧も壊れてたけど、大切なものかも知れないから、ひとまず一旦は一緒に隠しておいて……。
「グゲギャア……」――はぁ、疲れた。
彼は心底お疲れだと言う息を吐くと、彼女のベットとは別に寝床を用意すると、そこに丸まって寝息を立て始めるのであった。
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