第11話:妊娠しちゃったかも〜。

北海道行きの飛行機のチケットが前もって送られてきた。

俺の飛行機代はタダ、北海道に着いてから何泊滞在するかは自由。

だからまあ、宿泊代だけは自腹を切ることになる。

俺は貯金を下ろした。


全美連大会の受賞式が終わったらパーティーはボイコットして羅利子らりこと、

どこかの店でカニ料理かイクラ丼でも食べるかって俺は目論んでいた。


旅行当日、羅利子はさっそく小ぶりなフィギュアになって俺のショルダーバッグ

に潜り込んだ。


「窮屈じゃないか?羅利子」


「大丈夫だよ・・・退屈になったら寝るから」


「退屈じゃなくて窮屈じゃないかって言ったんだよ」


「窮屈でも退屈でもどっちでも同じ、中が暗くて何もできないでしょ・・・

だから寝るから・・・」


「そか?・・・じゃ〜行くか、北海道」


俺と羅利子は電車に乗って空港まで向かった。

もよりの駅を降りて空港まではタクシーを拾った。

北海道行きの飛行機の搭乗が、はじまるまで俺は空港の待合室の椅子に座って

休憩していた。


そしたら羅利子がショルダーから顔を出して言った。


「あの・・・ちょっと出るから・・・」


そう言うとピョンって飛び出したかと思ったら見る間に等身大に戻った。


「羅利子・・・なにやってんの?」

「これから飛行機に乗ろうって時にデカくなっちゃだめだろ?」

「今の誰かに見られなかったか?」


「あのね・・・小さいの維持するの時間に限界があるの」

「時間が来たら、もとに戻っちゃうんだよ」


「まじかよ・・・なんで、そんな大事なことを先に言わないんだよ」

「まだ一時間も経ってないぞ・・・」

「すぐにちっちゃくなれないのか?」


「無理だって・・・ちょっと休憩させてよ」

「小さくなるってけっこう体力と神通力つかうんだからね」


「事後報告か・・・」

「たく、もうすぐ搭乗はじまるぞ」

「そのままじゃ飛行機に乗れないかもしれないぞ?・・・」


「ギリまで、このままいさせて」

「ね、チューしてあげるから・・・」


「やめろ・・・こんなにたくさん人がいる中で、チューって・・・」

「・・・まあ、いいけどな」


ってことで羅利子は躊躇ためらうことなく壮太のクチビルにチュッてした。


「え〜、最初は、まずほっぺたからじゃないのかよ?」

「いきなりクチビルって・・・」


そしたら壮太は目の前がクラクラしはじめた。


「わ〜クラクラしてボーッとして来た・・・なんだこれ・・・」


「私のキスは媚薬を含んでるからね・・・しばらくはエロい気分が抜けない

から・・・」


「それも早く言えよ・・・こんなとこで俺をエロくしてどうすんだよ」

「俺になにをさせたいんだ?」


「うっ・・・壮太〜・・・私、急にお腹痛くなってきた・・・」


「もう、次から次へと・・・今度は腹痛か?」


「もしかしたら妊娠したかも・・・」


「はあ?・・・なに言ってんの・・・おまえ」


「さっき、壮太とチューしたから妊娠したんだよ・・・」


「あのな・・・それおっさんがよく使うギャグじゃねえか?・・・

俺とハグしたりチューしたら妊娠するぞ〜ってやつだろ?」


「え?そうなの?」


「そんなこと言ってたら世に中赤ちゃんだらけだわ」

「だいいち俺はエロくなってるだけで、なにもしてないだろ?・・・」


「壮太がエロくなってるうちにエッチしちゃおうよ・・・丁度いいじゃん」

「今からエッチしても間に合うよ・・・」


「おまえまでエロくなってどうすんだよ」

「こんなところでエッチなんかできる訳ないだろ・・・アホか」

「俺たち、犬や猿じゃないんだからな」


「猫ちゃんは出て来ないの?」


「それこだわるところ?・・・どうでもいいだろ・・・そんなこと」


「ねえ、しようよ・・・壮太は私、公認の彼氏でしょ・・・」


そう言いながら羅利子は服を脱ぎ始めた。


「脱ぐな、脱ぐな!!・・服脱ぐなよ」


「エッチなんて俺はまだ受け入れてないって言っただろ?」


「あのさ、私からは逃げられないんだよ、壮太には私が取り憑いてる

んだからね・・・」


「じゃ〜何か?、俺は一生人間の彼女は作れないってことかよ」


「だね」


「だね、じゃねえわ・・・」


すると場内放送が


「北海道行き505便、フライト準備が整いましたのでご搭乗のお客様は、搭乗口

までお越しくださいますようお願いいたします」


ってアナウンスがあった。


「羅利子、飛行機に乗るぞ・・・すぐにフィギュアに戻れ」


すると羅利子はシュルシュルって小さくなった。


「え〜ん壮太、私を手ですくってショルダーの中に入れて」


「手間のかかるやつ」


そう言って俺は羅利子をつかんだ。


「三ヶ月なんだから優しくしてよ・・・ドメスティックだよ」


「このぶんだと北海道に着く頃には出産だな、ポンコツ〜わらし〜」


でもって俺と羅利子は北海道行きの飛行機に乗った。

フライトの途中で、また羅利子がデカくなることは分かっていた。


見回ってくるCAさんをなんとか誤魔化さねば・・・。

一人は寂しいと思って羅利子を連れて来たのはいいが、間違ったかな。


それにさ・・イヤな予感がするんだ。


とぅ〜び〜こんて乳。

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