第10話:まじ北海道?

俺っちの家は、六畳の居間に台所、トイレ、風呂、で六畳の和室兼応接室、

それに二階に四畳半の部屋がふたつ、一つは俺の自由空間でひとつは父ちゃん、

母ちゃんの寝室・・・だったんだ。


俺が小学生の時までその寝室をつかっていたが俺が成長するにつれて、父ちゃんと

母ちゃんの寝室は下の四畳半に移動した。


そこには大人の事情ってものがあったんだろう。


なんでか理由は、聖少年の俺には分からなかった、今は立派な高校生だからな

今も首を傾げてたらアホだ。


で家族がひとり増えた訳で、羅利子の部屋は俺の隣の部屋になった。

妖怪たって女の子だから・・・デリカシーな問題のあるだろうからって

ことでそうなった。


でも実際、羅利子は俺の部屋に入り浸っていて、昼も夜も俺の部屋で

グースカピースカ寝ていた。

せっかく部屋を用意したけど意味がなかった。


さて父ちゃんが出世して、我が家も上昇気流に乗るのかと期待したが、

そんなに期待するほどのことは・・・あったんだな、これが・・・。


それは俺がまだ脂粉ばあさんや羅利子に会う前のこと。


俺は美術部の同級生から環境がテーマのコンクールにデザインを出品しなきゃ

いけなくなったんだけど、そんなデザインしてる時間ないから


「浅野、お前絵が上手いんだから俺の代わりに描いて出品してくれよ」


って頼まれて激ウマラーメンおごるって言われて、しぶしぶイラストを

描くのを引き受けたんだ。


美術部にいてイラストを人任せって・・・意味なかろうって思ったんだけど

絵やイラストを描くのが好きだった俺は、ふたつ返事で引きうけた。

で、当然俺の名前で出品した。

当選だろう?俺のイラストなんだから・・・。


だから脂粉ばあちゃんや羅利子のことでイラストを描いたことなんかすっかり

忘れたままだったんだ。


羅利子のことを母ちゃんの任せて俺は久しぶりに学校へ行った。

そしたら校長から呼ばれて、なんでも俺が描いたイラストが全美連とか

って大会で最優秀賞とかってのを取ったとかで、


「浅野君・・・君ね、ぜひ授賞式に参加してくれたまえ」


って話になったんだ。

でもって今年の全美連大会のパーティーと授賞式が北海道で開催される

んだってよ。


え〜北海道って大変なことになったじゃん。


適当に描いたイラストが最優秀賞って・・・なにかの間違いじゃねえの?。

まあ、ガキの頃から絵は上手かったけどな・・・

できたら俺は漫画家になりたい・・・そう思ってた時もあったし・・・

実は今も思ってる。


北海道までの旅費は、大会の招待だから俺はタダ。

だから北海道は俺ひとりで行くことになるわけで喜ばなきゃいけない

ところなんだけど、めんどくさ〜って感じ。


俺ひとりって心細いよな・・・父ちゃんも母ちゃんも北海道旅行

行かないかって提案しても旅費がもったいないって行かないだろうしな。

分かってるんだよ。


俺の小遣いで、羅利子同伴で行こうかな、北海道。


ってことで母ちゃんに事情を話したら、やっぱり父ちゃんと母ちゃんの

北海道行きは旅費がもったいないからと却下された。


しかたないので羅利子だけ連れて北海道に行くって言ったら未成年の女の子

同伴はマズいんじゃね?ってことになった。


そう言えば羅利子の歳って何歳だ?


「羅利子・・・何歳?」


「妖怪の歳だと三百六十五歳・・・人間の歳で言うと15歳」


「三百だって?・・・まじでか・・・三百年も生きてるのか?」

「どっち優先すりゃいいんだよ」


「この子、三百六十五歳です、なんて言ったって相手の顔から笑顔が消えるか

帰れって言われるのがオチだからな」


「ここは15歳だな・・・」


その話を、そばで聞いていた羅利子が言った。


「大丈夫だよ、私壮太のショルダーかポケットに入っていくから・・・

そしたら私の旅費いらないでしょ」


ん?なに言ってる?

なに言ってんだ、この子はって俺は思った。


「どうやってショルダーかポケットに入るんだよそんなデカい図体してて・・・」

「入れないのくらいバカでも分かるぞ」


すると羅利子は・・・俺と母ちゃんが見てる前で見る間に小さくなっていた。

小さくなった羅利子が手を振るのを見て俺はフィギュアじゃんって思った。


それを見た、母ちゃん・・・ハエたたきを持って来て羅利子をしばこうとした。


「おいおい、やめろよ・・・そんなもんで羅利子をしばいて羅利子がハエみたい

にぺしゃんこにツブれたら母ちゃん間違いなく地獄行きだぞ」


「およよ、羅利子・・・小さくなれるってそんなことできるんだ?」

「ちっこくなれるなんて聞いてないぞ」


「聞かれないもん・・・」

「いろいろ出し惜しみしてるの」


「え?ってことは他にもなにかできるのか?」


「さあ、どうなんだろ?」


「まあいいわ・・・ 」

「ってことだから、これで羅利子も旅費はいらなくなったし誰にも見つから

なきゃいいだろ」

「母ちゃん羅利子、連れて行くからな」


俺は半ば強引に羅利子をつれて北海道行きを母ちゃんに不承不承納得させた。


それにしても思ってもみない降ってわいたような北海道って?

これも羅利子ちゃん効果ってやつかよ?


とぅ〜び〜こんて乳。

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