第7話:壮太、羅利子を引き取る羽目になる。

さて死返玉まかるがえしのたまを使って黄泉比良坂よもつひらさかから生き返った壮太と羅利子拝らりこっぱい


羅利子らりこはすっかり壮太が好きになってしまっていた。

取り憑いちゃってるからね。


壮太にへばりついたまま羅利子が壮太のことが好きって言ったもんだから

それを見て聞いた、ばあさんが言った」


「あんたら、いつからそんな関係になったんだ?」


「クロマニヨン人が地上に現れた時から・・・」


そう羅利子が言った。


「ピテカントロプスがクロマニヨン人に変わっただけじぇねえかよ・・・」


「あんたたち相思相愛ってわけかい?」


「待て〜好きって言われただけで俺はまだ受け入れたわけじゃないからな」


「受け入れろ〜〜壮太・・・ヤダよ・・・私の片想いなんて・・・」


「あのな〜こういうのって時間が必要なんだよ」

「それに人間と妖怪の恋愛なんて聞いたことないわ」


「初例ってことでいいんじゃないの?」

「人類がはじめて月に降りた時みたいに人間の歴史にも妖怪の歴史にも残るよ」


「残らなくていいよ」


「そんなこと言わないで残そうよ・・・ね?、ふたりの愛の歴史」


「あんたら、イチャイチャはそこまで・・・」

「実は壮太くんに話があるの・・・」


「イチャイチャなんかしてねえし・・・ったく・・・」

「で?俺に話って? ばあちゃん」


「孫のことだけどね、できたらこのままあの子を壮太くんに引き取ってもらえ

ないかね」


「え???まじで・・・引き取るって・・・?」

「俺、羅利子救いだしたから、てっきり帰れると思ってたんだけどな」


「壮太くんにお願いしなきゃいけない理由があるんだよ」


「理由ってなに?」


「ひとつは私の寿命がもう尽きるってこと・・・数日中にはあっちに逝っちゃ

いそうだしね」


脂粉ばあちゃんはそう言って天井を指差した。


「ええ?まじで?」


「あとひとつは・・・羅利子がこの「あやかしの森」にひとり残したら、

いずれ、あの子はこの森の闇に取り込まれて人間や動物の見分けもつかなくなって、ただのボケ少女になったまま黄泉よみの国へ行ってしまうだろう」


「本来、あの子はどこかの屋敷か蔵に住み着くような定の子だからね」

「なにがしか、人と関わってないとダメな妖怪なんだよ」


「あ〜そうか羅利子は座敷わらしだからな〜」


「そうだよ、だから私は、あの子が孤独にならない方法を見つけてやらなきゃ

いけないんだ・・・」


「だから羅利子を俺に預かれって?」


「私はあの子に路頭に迷ってほしくから、だから壮太くんの家にあの子を

連れて帰って欲しいの、これも何かの縁」

「幸いにもあの子は壮太くんを慕ってるようだし・・・」


「それにさ、預かってくれたならあの子はきっと壮太くんや壮太くんの家に

幸運をもたらしてくれると思うよ」

「住み着いた家人の扱いによってだけど幸福をもたらすか不幸をもたらすか

その、どっちかだけどね」


「だから壮太一家が羅利子をないがしろにしたら、不幸貧乏になるからね」

「それだけはお覚えておいて・・・」

「羅利子を大切にしてくれたら、壮太くんにとっては羅利子はアゲマンになって

くれると思うからね」


「だから羅利子のことをお願いしたいの、いい?壮太くん」


って脂粉ばあさんに言われた・・・。


「なにか?羅利子は貧乏神ってことなのかよ」


「私は貧乏神なんかじゃないよ、失礼な」


「あ、びっくりした・・・そこにいたのか?」


そう言うと羅利子はまた俺にへばりついてきた。


「壮太一家が羅利子を大切にしてれば家族が路頭に迷うようことはないよ」


今度は、ばあさんが言った。


なわけで、俺は羅利子の面倒を見る羽目になった。

脂粉ばあさんが自分はもうすぐ死んじゃうって言うんだもんしょうがないよな。

羅利子の面倒見るの、俺しかいないし・・・。


それから、ばあさんは見る間に日々衰えていった。


俺はバス停の電話ボックスから毎日、ばあさんと羅利子の様子を見に、

あやかしの森に来たが、それもけっこうキツいと思ったから、しかたなく

しばらく学校を無断で休んだ。

24時間体制でついてないとばあさんの具合がいつ悪くなるかわ分からなかった

からね。


「いいかい、面倒なこと押し付けて悪いけど羅利子のこと頼んだよ」

「羅利子・・・いい子でね・・・壮太くんに迷惑かけないようにね」

「さよならだよ・・・」


「おばあちゃん・・・」


そう遺言を残して脂粉ばあさんは、あの世に逝ってしまった。

しばらくすると、ばあさんの体が静かに消えていって、そこにはばあさんが

着ていた衣装だけが残っていた。


その日の夜中まで羅利子は泣きっぱなしだった。


つづく。


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