第2話:脂粉仙娘(しふんせんじょう)

「そうだね〜・・・最近お客さん誰も来ないし・・」

「話し相手が欲しかったところだからちょうどいいわ」

「まあ、世代のギャップはけっこうあるだろうけど、クチさえ付いてりゃ

話し相手にくらいはなるでしょ」


「私とお兄ちゃんが知り合ったのも何かの縁、ってことで私のおうちに

招待するわ・・・よかったら来てみる?」


「ところでお兄さん、あんた名前は?」」


「あ、どうも〜浅野 壮太あさの そうたっす・・・ごく一般的高校生すかね」

年は17才、身長は170センチ、両親と俺と三人家族ってとこかな」


「そこまで聞いてないけどね・・・」

「壮太くん・・・あんたけっこう軽いわね」


「はあ、親父は鳶職やっててお袋は親父と一緒になる前CAやってたもんで

子供は親の背中見て育つって言うじゃないすか?・・・それで」


「っま、いいわ壮太くん・・・私、脂粉仙娘しふんせんじょうって言うの・・・それが名前・・・よろしくね」


「しふん?・・・せんじょう?・・・変わった名前」


「さ、行きましょ・・・私のおうちに・・・」


で、その「しふんせんじょう」さんは電話ボックスに俺を連れて入ったんだ。


そしたら、しばらくすると足元にぽっかり穴が開いて、

その穴に俺とばあさんは、シュルシュル〜って吸い込まれていった。

で、なにがなんだか分からないうちに頭の上にぽっかり穴があいたと思ったら

今度はその穴からシュルシュル〜ッヒョイっと出た。


出たところは、またまた電話ボックスだった。

あれ元に戻ってきたじゃんって思ってたら、ばあちゃんが俺を引っ張って

電話ボックスから外に出た。


外に出ると、バス停の横にあった電話ボックスと同じ電話ボックスだった。

そのボックスは今にも朽ちそうでとても古ぼけていて、いつの時代のものかも

分かんねえって感じだった。


でその電話ボックスの周りは鬱蒼うっそうとした森に囲まれていて、その森の中に藁葺き屋根の古民家が一軒建っていた。


「え、こんなところに家なんかあったんすね」


「ここが私におうちよ・・・」


「今にもぶっ壊れそうな屋敷だな、俺が押したら倒れるんじゃないか?」


「壮太・・・あんた失礼だよ」


「しふん・・・・」


「しふんせんじょう」


「そうそう「しふんせんじょう」さんはこのくそ汚い家にひとりで住んでるんすか?」


「あんた・・死にたい?」


「できたら長生きしたいっす」


「年寄り一人で住んでると物騒だからね・・・家に化け物を一匹飼ってるの」


「ば、化け物って言った?」


「って聞いたら誰も寄り付かないだろ?」


「まじでかよ・・・化け物がまじでいるのかと思ったじゃん」


(人を食ったばばあだな)

(名前も変な名前だし・・・ん?もしかして妖怪?)


そう、壮太の思ったとおり、ばあさんは妖怪だったのだ。

ばあさん、脂粉仙娘しふんせんじょうが住んでる森・・・この森は実は

「あやかしの森」と言って黄泉よみの国の入り口で、森の手前の古ぼけた鳥居を

抜けると黄泉比良坂よもつひらさかに通じているのだ。


つづく。



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