第5話 いざ面接、そして女子高校生


「ここが本社か......」


 俺をスカウトした企業が入っているというビル。


 指定された駐車場に車を停め、暫くマップを頼りながら辿り着いたそこは都心部のビルで、そこまで小さいわけでも滅茶苦茶大きいわけでもないものの綺麗な雰囲気で印象は悪くなかった。

 今回はなんでも俺と同じようにスカウトされた者たちをかき集めた面接らしいので、俺の他にも様々なエンジニアが来ているらしい。まあ今更ビビったところでどうしようもない。何とかなるだろう。


「まあ......大丈夫そうだな」


 そしてガラスに映った自分の姿を見て、社会人としてとんでもない恰好をしていないことだけ確認してからビルに入る。


 会社が入っているフロアで受付をしろとの指示が入っていたので、エントランスを抜けてから会社が入っているフロアに向かうエレベーターの前に立っていたのだが......若干の違和感を感じる。


 なんか明らかな女子高校生が居るのだ。俺の隣に。


 羽織った紺色のパーカーの下に見えるワイシャツとネクタイ、そしてチェック柄のスカート。そんな明らかな制服を纏った少女が、スマホを眺めていた。


 童顔な社会人がコスプレしている訳でも何でもなく、明らかに子供なのだ。しかも彼女自身は童顔でもなんでもないし、ガチ目な学生の雰囲気を纏っている。

 とはいえそもそも今日は土曜日である。社会見学にしては曜日がおかしいし、だからといってこのよな俺の娘よりも若い子が来るようなフロアはないはずだ。


 なんなのだこの少女は。


 別に俺がそういう趣味を持っている訳ではないが、面接直前に居るはずのない学生がこの場に居るという状況に若干焦っているのだ。いや、大抵の人は焦るだろう。

 実際にビル間違えてないよな、と思ってスマホでマップとメールに送られてきていた会場を照らし合わせてみた。まあ間違っておらず、完全に此処が会場であったのだが。


 そして一方的に気まずさを感じている俺を助けてくれたかのようにエレベーターが降りてきて、俺とその少女と数人の大人がエレベーターに乗り込む。他にも少しだけ人がいたが、皆その異質を放つ少女が気になっている様であった。


 しかし当の本人は特にその視線を気にするような素振りもせずに手元のスマホを弄っている。


 しかもこのJKのスマホ......普通の物ではない。


 一瞬だけ見えてしまった彼女のスマホのホーム画面は明らかに純正ではないような画面になっており、壁紙を変えたとかそんなレベルではない。明らかにシステムに手を加えている見た目をしているのだ。

 周りにいた恐らく面接を受けに来たエンジニアと思わしき方々も一瞬だけ彼女のスマホのホーム画面が見えてしまったのか、若干困惑したような表情をしている。


 俺が知っている女子高生のスマホという物は、可愛いケースが使われていたり透明なケースに様々なシールやステッカーが挟まれていてるアレである。

 流石にもうデコったショッキングピンクなガラケーなんぞ使っていないのは知っているのだが、近頃の娘は外装だけではなくシステム類まで改造したスマホを使っているのか......?


 そんなことを考えているとエレベーターは目的のフロアにつき、ドアが開く。

 少女はエレベーターのドア前に立っており、此処で降りる俺達からしたら若干邪魔だなあなんて思っていたらなんとその少女は誰よりも先にエレベーターから出た。





 大体面接の受付を行う時間としては良い感じな七~八分前。

 このフロアの感じは俺が勤めている会社のようなどんよりとした雰囲気はなく、すごく大きいわけではないものの居心地が良い。

 

 そして少しそんな新鮮な雰囲気に浸りかけながらもフロアの受付で担当者の方に声をかけて受付をするように資料に書かれていたのでそれに従い、受付と書かれた紙が貼ってあるカウンターの方に向かう。

 

「おはようございます。本日十時の面接で参りました、後藤 たけしと申します」


「おはようございます。では早速ですが書類の提出と身分証明書の提示をお願いしますね~」


 マジで早速明るくふわふわとした雰囲気で書類提出と身分証の提示を求めて来た受付の方。この会社の雰囲気がなんとなくわかった気がした。

 そして言われた通りに提出する書類を出したり身分証明書を提示したりすることで受付が完了し、待機場所へと案内される。


 そして指定の場所に向かおうとした瞬間、隣に居た人物が視界に入る。


「おはようございます。本日の十時からの面接で参りました、望月 舞衣と申します」


 ........さっきの女子高校生も受付をしていた。大丈夫なのかな、この会社。


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