第3話 取り調べ

 まず隆が生徒指導室に呼ばれた。スクーターの件だった。

 隆はスクーターに触ったことだけは認めた。

「それだけか? ほかに何もしてないやろな」

 教師は何度も訊いた。


 次に修司が呼ばれ、洋一が最後に呼ばれた。

「ワシも、同じこと訊かれた」

 洋一が言うと、修司が相槌を打った。

 洋一も修司も、スクーターが倒れたことだけは話していなかった。


 また、隆が呼ばれた。

「スクーターのことやけど、工具入れから、レンチが一本なくなっとったんや。誰が盗ったんか、正直に言うてみ。先生はお前のことだけは信用しとる。洋一か修司か、どっちや。言わんかったら、今日は帰れんで」

 隆はそんな工具のことさえ知らなかった。

(好きなようにせえ)

 隆は無言を通した。


 洋一も修司も同じ目にあっていた。生徒指導教師の収穫はゼロだった。

「レンチってなんやろ。修ちゃん、どんなものか、おっちゃんに訊いといてな」

 3人とも身に覚えがないので、気が楽だった。


 修司の父親は実演しながら、レンチの使用法を教えた。

「分かったか。ボルトを締めたり緩めたりするものや。スパナより使いやすいやろ。こんなものが盗られたって騒いどるんか。お前ら、運が悪かったなあ。権蔵爺さんが通りかからんかったら、疑われることもなかったのに」


 修司の報告を聞き、隆と洋一は急に、レンチを見たくなった。スパナとは大違いだったからだ。

「ワシらがスクーターで遊ぶ前に誰か、工具入れから盗ってたんや。だけど、誰が盗ったのやろ。千足村でレンチなんか持っとってもしようがないで」

「洋ちゃん。それや。お医者さんはほかの村へも行くやろ。その時に盗られたんと違うか」

 隆にパッとひらめいたものの、なんともとらえどころのない話になってきた。

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