半年

@ku-ro-usagi

短編

知り合いの紹介で霊視?未来視?みたいなの視てくれる人に会ってもらえることになった

なんかよく分かんないけど視える人らしい

カフェで会ったんだけど

パッと見

拍子抜けするくらいただの普通のおばさま(Nさん)だった

それで

特に何を聞かれるわけでもないのに

「右足首、まだ完治してないからもう少し気を付けてね」

とか

「お知り合いの誘いは断った方がいいかもしれないわ」

とか

いきなり言われたんだ

10日前に捻った足は

仕事場以外では話さなかった

知り合いからの

「一緒に○○の○○勉強会に行かない?」

って誘いは昨夜に来てたばかり

びっくりしたけど

他にも

仕事場での立ち位置や気を付けた方がいい事とかたくさん教えてくれた

霊視云々よりも

なんとなく

「人生の先輩からのアドバイス」

って感じで素直に頷けてたんだ


それで

話を聞きながら

アイスティをおかわりするか迷ってたら

Nさんが

「一緒にケーキも食べない?私、実は甘党なの」

と笑ったけど

多分

エネルギーを凄く使うんだろうなと

視てもらって初めて気づいた

単純に

「視える人っていいな」

なんて思ってたけど

きっと

凄く疲れることなんだ

Nさんは見せないようにしてたけどなんとなく察してしまった

途端に申し訳なくなってきて

一緒にケーキ食べてさ(美味しかった)

一息吐いたところで

私からの質問は最後にしようと

「今の彼氏との将来なんですけど…」

って聞いてみた

悩みとかじゃなくて

最近

実は

「そろそろ一緒に暮らす~?」

みたいな話もちらほら出てきて

気が早いかもだけどさ

結婚して、子供の数とかさ?

その、諸々色々気になるし?えへ?

なんて

一人で舞い上がってそわそわしてたら

Nさんは

その日初めて

天井に目を向けて考えるように黙ってた

不自然な程に長く

やっぱりよく分からないけどエネルギー切れ?

なのかな

私が

「やっぱり大丈夫です」

と言いかけた時

Nさんがやっと視線を私に戻して

「あのね、そうね、半年も経てば落ち着くから」

って

なぜか

曖昧で困ったような笑みを浮かべながら首を傾げられた

それまで本当に迷いないアドバイスだったのに

なんかそこだけ濁されて

最後の最後で

私は

中途半端な気分で放り出された様な気分で

喫茶店の前でNさんと別れた


数日後の夜に

近所のコンビニへ散歩がてら歩いてさ

部屋に帰るタイミングで彼から電話がかかってきたんだ

LINEじゃなくて電話なんて珍しい

びっくりしながらすぐに出たんだけど

電波が弱いのか

「どうしたの?」

って聞いても

こっちの声が聞こえなかったみたいで

もう一度

「どうしたの?電話なんて珍しいね」

って声を出しかけたら

「あのさー、養育費今月待ってくんない?」

「あーまぁ無理なら減額でもいいんだけど?」

「そっちだってさぁ、なんか色々手当てとか貰ってんだろ?」

って聞こえてきた

電波の悪さを

彼はどうやら

こちらの無言と勘違いしたらしく

今まで一度も聞いたこともない

妙に媚売った気持ち悪い声で捲し立ててきた

私は私で

「え?は?え?何?」

養育費?なんのこと?

見知らぬ人からの間違い電話?

とその場で頭の中が混乱でぐるぐるしてたら

「あっ」

ヤバッ

みたいな声と共に電話切れた

呆然としながら通話履歴見たけど

発信は間違いなく彼氏の番号だった


彼氏は

そのまま私の前からバックレるか迷ったけど

まだ私が彼に情があったら便利に使えるとでも思ったみたい

話がしたいと呼び出されて

巧みに作った神妙な顔で教えられたのは

私が知らされていなかっただけで

彼には離婚歴あった

しかもバツ2

それで2回目の奥さんとの間に子供がいて

私の名前が一字違いで電話を掛け間違えた挙げ句

私の彼を見る表情で

もう自分への情はないと察した途端


「ははっ元嫁と名前が似すぎなんだよなぁ、似てなきゃ間違えなかったのになぁ!」


って笑いながら言われた


ショックで気づいたら半年経ってた








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