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混濁した意識の最中、
さよならもまたねもなく目の前の君は消える。
凍えた体に嫌な汗が纏わりつく。
無理矢理に吸い込んだ空気のまずさに
打ちひしがれる。
1.5口分残ったたらこパスタに
見向きもせずにレジ前へ。
呼び出しベルを鳴らす間に店の外を窺う。
大事そうに娘を抱いて君が通りを歩いていく。
レジ内のバイト学生にご馳走様を言って
店を後にする。
少し離れた君の背を
死に物狂いで追いかけたいのを我慢して、
人通りのある道を
違和感の無いくらいの早足で抜ける。
自宅アパートに続く住宅街まで行くと
僕たち以外は見当たらなくなる。
先程よりは少しだけ近い距離を保って歩く。
四角い家に四角い車が止まっている。
家族は四人。
どの家も四人。
ここは四の通り。
僕の居場所はない。
先行く君がチャイムを鳴らして
白い家に吸い込まれるのを待っている。
玄関に明かりがともる。
この歩調で行けば
君にぶつかってしまうけれど止めない。
君と娘が笑うのがクローズアップされて
不意に消える。
寒いし暗いから自宅へ急ぐ。
白い家に誰が住んでいるのかを僕は知らない。
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