12
階段をいくつも上がって
ようやく玄関に辿り着く。
扉を閉めても
その場にずるずると座り込んだりしない。
靴をきちんと揃えて、
真っ暗闇にただいまも言う。
いそいそと荷物を置いて
手洗いうがいを済ませる。
リビングを明るくして、暖房もいれた。
そうしてやっとうずくまり、
1.5口分のたらこパスタを後悔する。
食べ物を粗末にするのは良くない。
あとたった1.5口分だったのに。
濁点のついた母音が口をついて出る。
背中に君の手のひら分のぬくもりを感じる。
1.5口分の命を粗末にしたね、と君が笑う。
笑い事じゃないだろう、こんなの。
恨みがましく睨みつけてみても
どこ吹く風なのが堪らなく愛おしい。
君さえいなければ、と思う。
君さえいなければ何だ、と思う。
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