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小さな町のライフスタイルを掌握している
大型ディスカウントストアで酒と線香を買う。
花はいらないと言っていたから買わなかった。
実家の仏間には
死んだ人間の好物が供えられているが
君の好物を僕は知らない。
確かカラスが集まるから
置かないほうがいいと教えてくれたはずだ。
案の定通学時間しか運行していないバスに
乗るのは諦めて、
個人経営のタクシーを呼ぶ。
お客さん見ない顔だね、
何て実際に聞かれるものなのか。
町の略歴だか
住人のゴシップ名鑑だか分からない話を
適当に受け流している内に到着する。
どうせ暇だから待っていようか
と提案されたが
時間がかかるからと丁重にお断りした。
共用の掃除道具を借りて石段を上る。
善意であつらえられた塩ビの手すりが
ぐらぐらと揺れて危なっかしいので
己の脚力だけに頼ることにする。
幾つもの石の間を抜けて
目当ての場所に辿り着く頃には
汗ばんで息も上がっていた。
砂利の間から雑草が生え、
落ち葉を被った石の塊は
すっかり苔むしている。
ひび割れた湯飲みに溜まった雨水に
虫の死骸が浮く。
話の通りさんざ荒れて忘れ去られたこの墓に、
君が居ないのを僕は知っている。
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