第9話
(うーん、頭が爆発しそうだぁ)
ドキドキした割にはショボい同接数(辛うじて三桁)で終わった配信から数日後、真琴が自宅で何やら書き物をしている。
ちなみに動画配信時のチャンネルは急激に登録者を増やしているのだが、京の提唱した《果報は寝て待てスタイル》によって完全に真琴の頭の中から消え去っていた。つまり、まめにチェックする事なく、放置されている。
(でもやっとかないと自分でもわけわからなくなるから、頑張ってやっとかないと。あーダルい……)
(えーと、今のところは全て暫定的なものとして……明日にしようかな? 面倒だし、駄目かな?)
ぐだぐだと、嫌なことを後回しにするために非常にうざい自問自答を繰り返している。
(まぁ……でもやっとくかぁ……はぁ)
何をしているかというと、一連のスキルに関する事柄を(交換スキルをメインとして)現状分かっている範囲で紙に書き留めていた。
自分でも今一つ理解できていないために、書き留めることで頭の中を整理する目的があった。色々と確認をしたいという意味もある。
これから先スキルを広めるにしろ、有効活用して何かをやらかすにしろ、なるべくなら正しく理解しておきたいので。
【交換スキルについて】
① スキルを所持する対象とスキルを交換できる(接触を伴う)
その際、スキルの覚醒をしていない対象のスキルは相手の同意なしに一方的に交換できる。
スキルの覚醒をしている対象については、相手の同意があればスキルは交換でき、同意がない場合は交換はされない(交換スキルは発動しない。京ちゃんと確認済み)
② スキルを交換する際、自分の中でそのスキルが重複する場合はLVが同じ場合に限り、一つに統合されてLVが1増える(同じスキルでもLVが違う場合は交換できない)
(これは自分で何回も料理スキルで試したからね。1+1=2になるけど、1+2は3にならなくて交換が発動しないんだもんなぁ。面倒臭い仕様だ……)
③ 誰でも一つのスキルを所持しているが、効果を発現するためには《覚醒》が必要。今まで確認した中で、スキルを複数所持している者は自分しかいない。
(覗き見するみたいで気が引けるから他人に鑑定とか全然してないけど、ペットショップの皆を見る限り一つだけなんだよねぇ)
④ どういう訳か自分の料理スキルだけは無限に生えてくる。そして、それを交換用にすることで、自分は無限大にスキルを所持することが可能らしい(らしいというのはあくまでも今のところ、上限らしきものが無いっぽいから)
(謎すぎるよぉ……助かるけど。非常に有難いけど、なんで私だけ? スキルに一番乗りしたから特典か何かなの?)
考えるのが嫌になった真琴は、ここまで書いてボールペンを置いた。これ以上のことは特に判明もしていないし、ということで。
布団に入り、所持しているスキル群を鑑定を用いて表示させた。仕事あがりのペットショップのパトロールはマメに継続しているため、少しづつだがスキルの数は増えている。
■五十嵐 真琴(いからし まこと)
会社員 26才 ♀
■スキル
スキル交換 LV1
鑑定LV1
毒耐性LV2
格闘技LV1
光魔法LV1
気配察知LV2
火魔法LV1
会話術LV1
体力増強LV1
運気上昇LV1
土魔法LV1
剣術LV1
投擲LV1
精神力強化LV1
魔力増幅LV1
肉体強化(俊敏)LV1
魅力向上LV1
水魔法LV1
料理LV1
(うーん、魔法なんかもスキルの中で一緒に扱われてるから凄ーく見辛い)
(もう少し整理整頓されて見易く表示できないものかな? えいっ!)
(あぁー駄目かぁー、そこまで便利機能なかった残念。取得した順とも微妙に違うっぽいし、うーん? ま、いっか)
(唯一、交換用の料理スキルだけは一番下にあって分かりやすくて良き。あれ? やっぱり取得した順?)
持ってるだけで簡単に料理で感動をもたらす《料理LV2》は京にねだられて交換してある。京いわく水魔法は全く使いどころがないらしい。日常生活の中では。
(全人類がスキルを使う世の中になったら、私のスキル交換でお金儲けできそうなのになぁー。あ、交換が凄いレアスキルなのが前提だけど)
(大工スキルを持ってるコックさんと、料理スキルを持ってる大工さんとで交換とか、需要ありそうなんだけどね)
(仮にそういう二人を相手にして一人5万円づつ報酬を貰ったら、それだけで10万円! す、凄い)
(他にも犯罪に使われる事のなさそうな安全なものに限ってだけど、こっちでスキルを用意してオークション方式で、とか?)
(誰か安全で平和なやり方を考えてくれないかなぁ? はぁー……)
(やっぱり自分で食べ物屋さんするのが間違いないのかな? 頑張って料理スキルをLV5くらいにしたら無双できそうな?)
(でも、お店を出せるような元手が無いんだよなぁ……悲しいことに。キッチンカーにしたって安くはないんだろうし。都内で独り暮らしをする女のお金の無さ舐めんな……トホホ)
(都内じゃなくて、独り暮らしでもなくて、お金に多少の余裕がありそうだったらイケてたのに。うん? うちの親は駄目かな?)
(少なくとも母さんの方は半分暇潰しでパートに行ってるようなもんだって本人が言ってたけど。京ちゃんのお母さんだって同じような事言ってた気が……)
(こうなったら京ちゃんもうちの親も京ちゃんの親も巻き込んで……いや、先ずは相談して、何か新しい動きができるかも知れない)
親しい友人が少ないからこそ、真琴は真っ先に自分の親に考えが至った。金銭が絡む以上、そう悪くない方向で物事が動き出しそうだ。真琴本人も得体の知れない、わくわくした予感のようなものに思考が囚われていく。
(なんならお父さんにも光魔法を使って貰って……いや、定年までまだまだあるから厳しいかな? 退職金とかその辺も絡んできそうだし)
(上手くお店が成り立って繁盛したら、うちのお兄ちゃんと京ちゃんちの都ちゃんも巻き込んで……)
真琴の二つ年上の兄=弘樹(ひろき)、京の四つ年下の妹=都(みやこ)、共に怪しい企みに加担というか、高確率で巻き込まれそうな雰囲気になってきた。
(今月は三連休もあるし、明日京ちゃんに確認してみよう。京ちゃんがオッケーなら母さんと、なんなら京ちゃんちのお母さんも都合つけて貰って……)
斯くして真琴と京の帰郷が予定された。翌日には京の承諾をあっさりと引き出し(三連休のうち二日間は元々京の勤める店が休業日だったため、簡単に三連休を取ることができた)、真琴の両親と京の両親についても予定
を確認して二家族で集まることが決められてゆく。
真琴と京を介して知り合いになった母親どうしは一緒にランチに出掛ける程度には仲が良く、比較的簡単に話が進んでいく。
ちなみに母親二人は娘達があらたまって両家を集めて帰郷する事態に対して、「結婚相手でも連れて来るのでは?」と盛り上がっていたらしい。後日談として明らかになるのだが。
真琴の方も準備として、料理スキルのLVを頑張って5まで上げた。京と二人分。
スキルがどうのといった話は、恐らく家族総出で以て「何言ってんだコイツ?」な扱いを受ける、だろうことは容易に想像できる。
なので、先ずはスキルの力によって全員をおもいっきりブン殴る──的なやり方を取らせて貰うことにした。
若干威力が怖いため、料理スキルLV5は帰郷した時まで封印するつもりだが。
他にも持ち物やお土産なんかを用意していたら、あっという間に里帰りする当日をむかえた。
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