第53話

 翌日。


 教室には昨日再試験を申し込んでいた生徒が集まっていた。


 三十人いたクラスメイト達の内、残ったは十人ほどだった。


 他の生徒達は昨日見せつけられたコンラッドの強さに合格を諦めて、出席していない。


 しばらくするとアレンがやって来た。


 少なくなった生徒を見て少し驚く。


「驚いたな。勝ち目があると思ってる奴らがこんなにいるとは。俺の授業の賜物だな」


 自画自賛するアレンにソフィアが尋ねる。


「アレン先生。あの人は来ないんですか?」


「あの人って言うな。コンラッド先生だ。正確には特別顧問。役職的には俺より上だ。失礼のないように」


「……はい」


 ソフィアは少し不満そうに答えた。


「先生は来ない。お前達の情報を入れることはアンフェアだと言ってた」


 クロエは不思議がった。


「アンフェア?」


「ああ。お前達は協力して先生に立ち向かうしかない。その中にはまだ手の内を見せてない奴らの奇襲も含まれてるだろう。能力を知られればそれだけ不利。これ以上は勝ち目がなくなるからかわいそうというのが先生の意見だ」


 クロエは一瞬ムッとするが、事実なので言い返せない。


 アレンは教壇に立つと説明を始めた。


「今から再試験のルールを伝える。先日の試験に比べれば驚くほど難易度は低いが、それでも相手は先生だ。緩むことなく立ち向かってほしい」


 アレンは心配そうに続けた。


「試験内容を大雑把に言えば鬼ごっこだ」


 ソフィアが怪訝な顔をする。


「鬼ごっこ……?」


「ああ。もちろん普通の鬼ごっこじゃないがな。まずお前らの目的は先生に触れること。ここまでは先日の試験とあまり変わらない。だが前とは違ってハンデがある。一つ目、先生は左手しか使わない。それ以外で攻撃したら反則負けだ。二つ目。先生にはアイテムを身につけてもらい、マナ制御の制限をしてもらう。レイチェルの話では三割程度まで出力を下げられるらしい。三つ目はお前達の内誰か一人が先生に触れられれば全員が合格となる。ここに来なかった奴はせめてルールを聞くべきだったな」


 アレンは呆れながら続けた。


「場所は学校の所有地。お前達もよく使う練習場だ。制限時間は一時間。その間先生は逃げ回り、タッチされたら負け。分かりやすいだろ?」


 たしかに前日の試験よりは簡単だが、それでも生徒達は自信がなさそうだった。


 アレンは生徒達を元気づけるように言った。


「俺はお前達なら先生に勝てると思ってる。お前達はあれだけ力の差を見せつけられたのにもかかわらずここに残った。その勇気を俺は誇りたい。だがもちろん強者を倒すには創意工夫が必要だ。ありとあらゆる手を駆使してあのおっさんをあっと言わせてやれ!」


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