第31話

 綺麗なもんだなとコンラッドは思った。


 街灯に照らされた金髪が風でなびき、青い目が微かに光る。


 白い肌は闇に映え、その姿は同性であっても美しいと思えるものだった。


男のエルフは剣を抜いた。


 それを見てコンラッドはため息をついた。


 エルフは素早く走り出すとコンラッドに向かって剣を薙いだ。


 コンラッドは体を反らし、紙一重で避ける。


 エルフは一瞬目を見開いて驚くも、続けざまに攻撃を続けた。


 普通の人間では目で追えぬほどの一流の剣技。


 しかしそのどれもコンラッドには当たらない。


 エルフは作戦を変更し、空いていた左手に魔力を溜め、放った。


 だが放つ瞬間、コンラッドに手首を掴まれ、魔力の弾丸は逸れた。


「なっ!?」


 驚くエルフ。


 その視界は次の瞬間には一回転し、かと思えば背中から地面に落とされた。


「がっ!」


 痛みを感じ、息ができなくなって初めてエルフは自分がコンラッドに投げられたことを理解した。


 手放した剣が遅れて地面に刺さる。


 コンラッドは呆れながらエルフを見下ろした。


「良い剣だ。魔法の使い方もこなれてる。ただもう少し実戦経験が欲しいな」


 エルフは反撃しようとしたが、体が動かなかった。


 コンラッドはそれを見て踵を返す。


「じゃあ、俺はこれで」


 歩き出すコンラッドにエルフはなんとか上半身を起こして尋ねた。


「……お、お前はなんだ?」


 コンラッドは歩いたまま答えた。


「二児の父だ。あ。もうすぐ三児になる。いや、もう三児か?」


 コンラッドが妊娠中はどうカウントされるのか悩んでいるとあることに気付いて足を止めた。


 振り返ったコンラッドはエルフに尋ねた。


「そう言えばエルフの兄ちゃん。もしかしてあんたエリンの兄さんを知ってたりする?」


「エリン……?」


 エルフの男は息を荒くしながらどうにか膝をついて答えた。


「エリンは俺の妹だ……。お前、エリンを知ってるのか?」


 エルフの男はエリンの兄、ウォルクだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る