第27話
カーティスに迎えられたコンラッドは馬車に乗った。
コンラッドは街並を眺めながら呟いた。
「王都も色々変わったな。この辺りなんて家が少なかったのに」
カーティスは頷いた。
「そうですね。十年前。先生達が魔王を倒してからです。街が少しずつ大きくなりました。平和は人を豊かにします。戦後復興と低金利が重なって投資家が集まり、戦争から戻ってきた若い働き手のおかげで安い人材が増えた。最初の五年はすごい勢いでした。今は落ちてついてきましたけど、まだまだ発展途上です」
「へえ。なら犯罪も増えただろ?」
カーティスは苦笑した。
「そうですね。我々の仕事は増えました。経済的に盛り上がってる一方で、色んなところから人が入ってきますからね。昼の強盗みたいに悪さする奴も大勢いますよ」
「大変だな」
「いえ。仕事ですから。それに自分にはこれくらいしかできません」
「これくらいって。警察は立派な仕事だろ」
「ええ。ですがアレン達に比べたら地味な仕事です。なんせ世界を救う戦いに勝ったわけですから」
「そんな大した差はなかったよ。お前も候補に入ってた」
「でも選ばれなかった」
カーティスがそう言うとコンラッドはばつが悪そうにした。
「……人生は長い。そういうこともあるさ」
コンラッドは横目でチラリとカーティスを見た。
「……恨んでるか?」
カーティスはかぶりを振って笑った。
「まさか。自分の実力不足。それだけです。……ただ」
カーティスは遠い目をして続けた。
「自分も世界を守る戦いに参加したかった。この国を、王都を守りたかった。それができないふがいなさはありました。だから父親がいるからと避けていた警察官になったんです。少しでもこの国を守れるようにと」
「……そうか。学校は通過点だ。あの時点であそこは最高の場所だったんだろうけど、だとしても通過点には違いない。お前がお前の目的地に着けてよかったよ」
コンラッドがそう言うとカーティスは優しく微笑した。
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