第26話
「全員署に連行しろ」
カーティスは部下に指示を出し、騒ぎの中帰ろうとするコンラッドに笑顔で声をかけた。
「先生。お久しぶりです。この街に住んでたんですね」
「いや、ただ寄っただけだよ。カーティス。元気そうだな。警察になったのか」
「はい。今回は助かりました」
「え? なにが?」
コンラッドはポカンとした。
カーティスは微笑んだ。
「先生が強盗を引き付けてくれたおかげで安全に制圧できました。わざと目立つ作戦だった。そうでしょ?」
「いや、ただ早く帰りたかっただけだけど」
カーティスは面白がって笑った。
「相変わらずですね。マイペースで、他人のことを気にしない」
「それって褒めてる?」
「ある意味では。警察になってからはそれが大事だと痛感します。情けをかけていたら市民が殺される。自分の正義に従い、粛々と業務をこなすことが求められますから。他人の目を気にしていたらできない仕事です」
「大変そうだな」
「そうですね。でもやりがいも感じます」
すると一人の警官がカーティスの元にやって来て耳打ちした。
「……どうしますか?」
「そうか。こちらで対処する。今は一緒に運んでおけ」
「はい」
部下が去っていくとコンラッドは不思議そうにした。
「なにかあったのか?」
カーティスは微笑んだ。
「あの中に魔族が潜んでいたんですよ。先生を襲った奴です。最近多いんですよ。悪党と魔族が手を組んだ犯罪が。あいつらは魔法を使う場合がありますからね。厳重に拘束しないといけません。そうでないと――」
カーティスがそこまで行った時だった。馬車が破壊され、中から赤い目と長い耳をした男が出てきた。
「こうなります」
男はカーティスを睨んだ。
「思い出した……! お前だな! 魔族殺しの男ッ!」
「犯罪者は捕まえる。抵抗するなら殺す時もある。それだけだ」
「仲間を返しやがれッ!」
魔族はその爪や牙を一時的に鋭くすることができる。
男はナイフのように尖らせた手刀でカーティスの首を狙った。
だが一歩遅かった。
男の周りに出現した魔方陣からマナの鎖が伸び、両手両足を拘束する。
「がっ! はなせッ!」
「……抵抗するなら仕方がない」
カーティスは男の顔の前に先程使った弾丸の魔方陣を作り出した。
そして躊躇なく放つ。
回避することは不可能だった。
だが、衝撃で発生した煙が晴れると男の無事な姿が現れた。
さっきまでカーティスの近くにいたコンラッドが弾丸を手のひらで受け止めていた。
「……どういうことですか?」
「強盗は失敗したんだ。ちょっと暴れたくらいで殺さなくてもいいだろ」
「……ですがこのままだと市民に危害が――」
その時だった。
目にもとまらぬ手刀が放たれ。強盗の男は気絶した。
放ったコンラッドはカーティスに向き直す。
「これで半日は起きない。問題は解決したな」
「…………ええ。そうですね。おい。連れていけ」
カーティスは納得してない様子で部下に命じた。
部下は新しい馬車に気絶した男を運んだ。
それを見届けるとカーティスはコンラッドに提案した。
「ありがとうございました。もしよかったらお礼に今夜一緒に食事でもどうですか?」
「お前の奢りならいいよ」
コンラッドは真面目な顔で昔の生徒にせびった。
カーティスは苦笑した。
「決まりですね。仕事が終わったらホテルまで迎えに行きます」
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