魔王のメンツ



 魔王である俺は時たま現れる強い勇者に怯えていた。


 やつらは基本は雑魚なのだが数人に一人、最強の剣を携えたやつがやってくる。

 あの剣を持ってこられると魔王の俺も瞬殺されてしまいラスボスとしての顔が立たないのだ。


「そうだ、勇者が最強の剣を手に入れる前に俺が先回りして入手してしまえばいいのだ」



 ”魔王現在離席中 しばし待たれよ”



 俺は常に座っていた玉座に張り紙をして、最強の剣があると言われるダンジョンへと向かった。



 いざダンジョンに入ると、何回か角を曲がったあたりでどこから来たのかわからなくなってしまった。


「まずいぞ、こういうダンジョンは地図が必須だった…!」


 マップを把握していない俺は帰る道がわからず、さすが”最強の剣”があるダンジョンなだけあって、出現するモンスターも最強だ。俺は段々と疲弊していってついに動けなくなってしまった。


 意識が遠のきそうになったその瞬間、角から勇者と思わしき青年が現れた。


「迷われたんですか?大丈夫ですか」

「あ、ああ、まあ、情けないことに…」


 彼は貴重なワープアイテムを使って地上に戻してくれた。



 後日、魔王の席に戻った俺のもとに、いつも通り勇者が訪れた。

 しかしあることに気付く。


「あ!この前の勇者さん…!」

「あれ?この前の…!あなた魔王だったんですか」

「その節はお世話になりました」

「敵対するのは残念ですけど、僕もエンディングへ行きたいので…あなたを倒してその扉の先に行かねばなりません。いざ一勝負お願いします!!」



「いやいや、命の恩人を攻撃するなんてできません。どうぞ通ってください」






ー完ー

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