第27話 好き。
早速、真凜がさっきの写真をインスタにあげる。
――ポコンッ。ポコポコンッ。
「……ねぇ、律。すごい量の通知が来てるんだけど」
その瞬間から、花梨ちゃんのファンたちからたくさんの反応が。
『すごいです! 花梨ちゃんが画面から飛び出してきたのかと思いました! まさに2.5次元ですね!』
『衣装、メイク、どっちもクオリティがヤバいです! 感動しました』
『このキャラクターはよく知らないんですけどめちゃくちゃ可愛いです! ファンになりました! 次のコスプレも期待大です』
「むふふ。そうだよ、律の作った衣装はすごいんだから。てか、花梨ちゃんのことを知らない人も反応してくれてるじゃん! すごくない!?」
どうやら花梨ちゃんファン以外の人たちからの反応も多いみたいだ。それを見た真凛はすごく嬉しそう。口元がニヤけている。
「真凛が完璧に着こなしてるのがすごいんだよ。……正直、本当に花梨ちゃんがいるみたいでめちゃくちゃドキドキするし」
「……私もドキドキしてるよ」
「え」
「だって、花梨ちゃんになれたんだよ? ずっと見てきたあの花梨ちゃんに……」
そうだ。俺だけじゃなく、真凛も花梨ちゃんの大ファンなんだ。感動しないわけがない。
「それに、律にこんなにじっくり見られてるしね?」
「……ご、ごめん。不可抗力で」
気づかないうちにジロジロと見てしまっていたらしい。俺はサッと目を逸らす。
「もしかして見惚れてた?」
「まぁ、はい……。正直、可愛すぎるというか」
今の気持ちを素直に伝える。
しかし、その言葉を聞いた彼女はどこか不満げだ。俺の顔をむすっとした表情で見つめている。
「それって、花梨ちゃんだから?」
……なんとも答えにくい質問を投げかけてくる真凛。
俺としては好き×好きで、超大好きくらいの気持ちなんだけど、伝えるのはちょっとどうかなと口ごもる。
「ねぇ、教えて? 律の本当の気持ち」
黙ってしまった俺に、追い打ちをかけてくる。少しずつ距離が縮まり、今にも体が触れ合いそうになる。
気持ちを伝えるなら、今しかない。
意を決して口を開く。
「……俺は、真凛のことが好きだ。花梨ちゃんだからじゃない。真凛だからドキドキしてる」
「……ほんとう? 嘘じゃない?」
「嘘じゃない。ずっと前から、真凛のことが好きだった」
……言えた。俺の本当の気持ち。
その言葉を聞いた真凛は、今にも泣き出しそうな顔で、ぷるぷると震えている。
「ありがとう。……ごめん、ちょっと感情の整理が追いつかない……」
震える声で真凛が呟く。
――ああ、やってしまった。真凛を悲しませるなら、伝えなければよかった。
「……いきなりこんなこと言われても困るよね。俺なんかが真凛と一緒にいるのはおかしいって、ずっと思ってた。俺は真凛と一緒にいれればそれでよかったんだけど、どうしても伝えたかったんだ」
今までの関係を壊すような、俺の気持ち。真凛を悲しませることになるなら、ずっと隠しておくべきだったんだ……。
「……ちがう! 違うの! 私は嬉しいの! ……なんで、そうやっていつも自分を下げるの!? 私の
今までの感情を全て爆発させるかのような、真凛の言葉。
……嬉しい? それってどういう……。
「……私も、律のことが好き! 大好き! 律が私のことを好きになるずっと前から好きだったの!」
「えっ……!? って、うわっ!」
混乱する俺を逃さないよう、真凛が抱きついてくる。
体温と体温が溶け合い、一つになる。お互いの胸の高鳴りが分かるくらい、強く。
「……もう逃さないから。律、好きだよ……」
俺の胸に顔を埋めながら、くぐもった声でつぶやく真凛の声を聞いて、やっと実感が湧いてくる。
信じられないけど、どうやら俺たちは両思いだった、と。
「真凛……」
優しく真凛を抱きしめ返す。その体は小さく震えていた。
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