第20話 契約
天使―それは神の神聖さや啓示を伝令する役割を担っており、人間達を守るよう神から命じられている存在である。
時に、天使が吹くラッパにより世界に災厄がもたらされたり、天使が悪魔と戦うなど様々な出来事が伝承されてきている。
今日、ソフィリアは七大天使の一人である“大天使 エル”との接触を試みるため、天界随一の巨大都市 ホーリーに来ていた。
ホーリーでは大多数の天使が住処とし、生活を営んでいる。そして、一際目立つのは神が建築した天の塔である。大天使などカーストが上位な天使ほど上階に住んでいる。
「ここに来るのも何年ぶりでしょうか、相も変わらず壮観ですね……」
懐かしさに浸っているソフィリアに一人の天使が
「珍しい方が来ていると思ったら、ソフィリア様でしたか。お久しぶりです」
「もしや、マヤ様ですか?随分と美しくなられたと言いますか…」
“天使 マヤ”それが彼女の名である。マヤが幼い頃、ソフィリアは度々勉強を教えていたこともあり、成長した姿に平静は保ちつつも驚いていた。
「久々に会えて嬉しいです。それで、ここへ来るということは例の件ですか?」
「ええ、勿論そうです。エル様に直接交渉をしに来ました」
「エル様のことですから大丈夫だとは思いますが、一応私からも連絡を入れておきますね」
マヤはミュニスを取り出し、言伝する。
「私も着いて行った方が心強かったりしますか?」
「私の事馬鹿にしてますか?」
苦い顔をするソフィリアにマヤは可笑しく笑った。
以前は塔へ登ることは全て自力で成し遂げなければならなかったが、現在は自由自在に動くことが出来る雲を利用し、階層の高い塔への移動ができるようになっている。
そして、ソフィリアは塔の最上階へと降り立った。
「失礼します」
部屋の前へと立ち、ドアをノックする。
了解の言葉が聞こえるとドアを開ける。
白を基調する、整理整頓されたシンプルな部屋の作りになっていた。
「俺に何か用か?ソフィリア」
ゼノンのような
彼の名前は“大天使 エル”。数多の天使を束ねる大天使である。
「此度は機会を与えて下さりありがとうございます、エル様も知っての通り“アウロラ”についての話です」
ソフィリアが続けて話し始めるのを遮り、エルは眉を
「俺に協力して欲しい、ということで間違いは無いな?」
「ええ、そうですよ」
「いいだろう」
二つ返事で了承するエルにソフィリアは困惑する。
これがマヤの言っていた“大丈夫”ということなのだろうか。
「その代わりと言ってはなんだが、頼みたいことがある」
「なんでしょうか」
「例のエルフに会わせて欲しい」
「ミラに…ですか?」
「理由は訳あって言うことが出来ない。ただ、悪いようにはしないことを誓う」
厳格な蒼い瞳がソフィリアを
「分かりました、私から言っておきます」
「契約成立だ」
背を向け、ドアに手をかけたソフィリアを抑えた声で呼び止める。
「ああ、それと。ついでと言ってはなんだが…悪神に関するデータを託したいと思っている」
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