第15話 希望の光
神々しく輝く光が矢となり、奇獣達へと突き刺さる。
「何をずっとモタモタしてんの?」
刺々しい口調に鋭い眼光、その身からは自信が満ち溢れ、まさに神の器に相応しい容貌を持ち合わせている、万物の神 アクアがその場に降り立った。
「アクア様…どうしてここに」
「勘違いしないで、別にあんた達を助けようなんて思ってな……」
「あくあぁぁぁぁ!」
「な、何すんのよ!」
アテラはアクアに勢いよく抱きついた。いつも通りの日常風景にソフィリアも緊張の糸が途切れ、ため息をついた。
「アクア様…少し力を貸してください」
「乗りかかった船と言うべきかしら、もちろんやるわ」
「それは少し違う気がしますが…どうやらここには高密度の結界が張られていて、私の力は及ばず難航しており…」
「なるほどね、事態は読めた。でもアテラがいるじゃない」
「余に期待するのは無駄じゃ!なぜなら結界に対して全く無知であるからな」
薄い胸を張り、堂々と言い放つその姿にアクアですら呆れていた。
「分かった、じゃあ下がってて」
アクアに促され、ソフィリアとアテラは数歩、後ろへと下がる。
すると、アクアは自身の神器であるランツェを取り出し上空を突いてみせた。
「あ、あのアクア様…何を」
数秒後、空中に亀裂が入り始めバリバリと音を立てて崩壊した。その瞬間、大量のウルファ達は姿を消す。アクアは自慢気な顔を見せ、その先へと歩き始める。
「や、槍でも壊せるんですね」
ソフィリアの受けてきた教育では結界は“ディストーション”という結界破壊魔法でしか対処法はないと考えられていた。
だが、魔法が使われた形跡はなく神器で壊していたため疑問が残る。
「余でも初めて見たかも…結界を槍で壊す者を」
「まぁ私にしか出来ない芸当よね、恐れ入ったかしら?」
天色の髪を靡かせ、自信満々に胸を張るアクア。神という存在を見せつけられた瞬間でもあった、常識から逸脱しているその様が。
アクアに着いていき歩くこと数分、キラキラと光り輝く不思議な魅力を持つ川が道を裂いていた。神秘的な雰囲気に似つかわしい川のせせらぎがソフィリア達に癒しを与える。
「凄く綺麗ですね、また罠だと勘繰ってしまうくらいに…」
「綺麗な物ほど内側は恐ろしいものよ、さっさと渡っちゃいましょ」
川を渡ろうとした時、儚げな少女の声が森林に響き渡る。
「貴方達はどこからこられたのですか?」
葵色の長い髪に、硝子のように透明感のある肌、緑色のつぶらな瞳を持つどこか物悲しげな顔を浮かべた少女が問いかけてくる。
その声は一切の濁りを感じさせない天然水のように透き通っていた。今にも壊れそうな、支えが必要なほどか細く弱々しい声音。
不信感を抱くアクアは対照的に針を刺すようなハキハキとした口調で少女と会話を試みる。
「私達はそうね、外部から来たわ」
「なるほど、よくここまで来ることが出来ましたね…かなり力を込めて結界を張ったつもりなのですが」
「貴方があの結界を…?」
少女のような見た目から、あの結界を張ることは想像できないため戸惑いを隠すことが出来なかった。
「まぁでしょうね、その長い耳…あんたがエルフ族の生き残りでしょ?」
アクアの言葉を受け、少女はたじろぐ様子もなくただ微笑していた。
その姿にソフィリアはどこか気味の悪い印象を抱く。
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