カブトムシ捜索隊②

「あんたのパパも、小学生の頃はよく群馬へカブトムシを獲りに行ってたねぇ」


祖母は群馬へ向かう電車の中で、そう呟きました。


「それで、どうだったの?」


「うん、虫籠いっぱいにして帰ってきたねぇ」


「へぇ~」


私は祖母の言葉を聞いて、「もしかしたらたくさん獲れるんじゃないか」という淡い期待に胸を膨らませていました。




ですが、現実はそんなに甘くはありません。


2日経ってもなかなか見つからず、罠を仕掛けてもことごとく失敗に終わってしまいました。


これには探索隊員の「群馬のおじさん」も頭を抱えるばかりで、


「昔は散々見たんだけどなぁ…」


と心細く弱音を吐いていました。




後にわかったことですが、カブトムシが全く現れなかった原因として、主に2つが挙げられました。


1つは「LEDライトの普及」、もう1つは「季節が遅すぎた」ということです。



LEDライトは今まで主流だった白熱電球に比べ、「消費電力量」や「持続性」、「熱を出しにくい」などの観点から、能力面で大きく勝っていました。


さらに、紫外線を出さないLEDには、虫が近寄らないという利点(私にとっては欠点)もあったのです。


そのため、街灯や家の明かりが次々とLEDに変えられていくにつれ、虫たちは姿を見せなくなっていったのです。



また、季節というのも、カブトムシを捕まえる上で重要なポイントです。


私たち探索隊が群馬へやってきたのは8月下旬頃。


一方、カブトムシ捕獲のベストシーズンは7月から8月の中旬頃。


勿論、遅くまで獲れる地域もあるのですが、この辺りのシーズンは既に終わってしまっていたのです。




群馬へ来て4日目の朝。


お昼過ぎには東京へ帰らないといけない私は、半べそをかきながら身支度を始めていました。


そんな私を見かねたのか、群馬のおじさんは気分転換にと、少し離れた山道へドライブに連れていってくれたのです。


当時の私はぶすっとしていて、あまり乗り気ではありませんでしたが、これから起こることを考えると、それが奇跡の始まりだったように感じてならないのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る