第13話「明日はオフ会」
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お久しぶりです。
〈切り抜きたくて〉というチャンネルを運営している者です。以前は、〈目白〉という名前で汐民をやっていました。
早速、本題に入らせていただきたいのですが、久々に推し語りでもしませんか?
怪しいのは重々承知です。しかし今、僕が語り合えると思うのはサムネさんしかいないのです。
ご返信お待ちしています。
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「……出会い厨みたいな文言だね」
「ああ、僕もそう思う」
「これ返信くると思ってる?」
「分からん、でもこんな内容しか送れないから」
こんな怪しさしかないメッセージに返信してくれるか分からない。もしかしたらスパムとして通報されるかもしれない。
けれど、こうするしかないのだ。
やってみなくては分からないと自分に言い聞かせ、送信ボタンを押し込んだ。
次の日、ピコンと通知音が響いた。メッセージアプリを開くと、返信が届いていた。僕ともくずは文面を見て、目をぱちくりとさせる。
「ええ、まさかの……」
「僕もびっくりだよ」
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〈切り抜きたくて〉様
メッセージ確認しました。もくずちゃんへの愛、しっかりと伝わってきました。
文字だけですと伝わるものも伝わらないでしょうし、一度お会いすることは可能でしょうか。
引退した今でも一途にもくずちゃんを愛し続ける〈切り抜きたくて〉様がどのような方なのか、とても興味があります。
ご返答のほど、よろしくお願いいたします。
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「あ、ああ、会おうだってよ。目代くん」
「メッセージのやり取りだけで終わると思ってたんだけどな」
「どうするの? これ……」
「もちろん会うよ」
「え、危なくない⁉」
本気なの? と言いたげな瞳が僕の心を見事に打ち抜く。
好きな女の子に心配なんてかけたくない。頼りがいのある背中を見せたいのが男という生き物なのだ。
「もくずのことを救える手がかりになるのなら僕は何だってやるさ」
有限実行と言わんばかりに、僕は文字を打ち込んでいく。
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都合が良い日は、いつでしょうか?
僕は土日空いてます。
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簡潔な文章に誤字脱字が無いかを確認し、送信ボタンを押した。
ちょうどメッセージを見ていたのか、すぐに返信が帰って来る。
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私事で申し訳ないのですが、今月は予定が詰まっていまして、直近だと明日になってしまいます。どうでしょうか?
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「急だね、多忙な人なのかな?」
「僕としてはありがたいけどな」
天谷さんとの関係が冷え切ってしまう前にどうにかしたいのが本音だ。何かしらを得られるチャンスは近い方が好都合なのだ。
心の中でガッツポーズをしつつ、返事を考える。
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大丈夫です。
では、午後一時に上野駅でどうでしょうか。
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地元からは少し離れた場所を提示する。
〈サムネさん〉が東京に住んでいるということは、もくずが失踪する前に聞いたことがあった。向こうも僕が東京住みであることは知っているし、まあいい場所を提示したんじゃないかと思う。
近くには人が多い公園もカフェもある。
お昼からの集合となれば、お互いに警戒するものが少なくて済むだろう。
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分かりました。公園改札でお願いします。
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そうして急遽、出かける予定が出来たのだった。
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