第8話「想定外のお願い」
「でね、目代くんにしてほしいことは一つ! すっごく重要で、とっても大変なミッションだよ」
「そこまで言うって一体何を頼まれるんだ?」
デスクトップに現れた汐見もくずは、神妙な顔をして僕に向き合う。
復帰の手伝いというが、そんじょそこらの男子高校生になにが出来るというのだろうか。
「私の魂を直接説得しに行ってほしいんだ」
「はああぁぁぁ⁉ た、魂に会えだって?」
「ダメかな……?」
「Ⅴにとって魂は一番タブーな話題だぞ! 炎上リスクがぐっと高まるんだ。それなのに僕に頼むなんて、軽率じゃないか?」
「目代くん、私の魂についてネットで広めようとか思ってるの?」
「やるわけないだろ。ただ、リスクを考えろってこと」
「私はそこを踏まえたうえでお願いしてるの」
もくずの表情は真剣そのものだ。
「私は賭けられるよ。文字通り、魂を」
吸い込まれそうなくらい透き通った浅葱色の瞳は、僕の心を揺れ動かすには十分だった。
「そこまで言われちゃ協力しないわけにはいかないな」
彼女のためになるのなら。
もくずが魂を賭けられるのなら、僕は命だって賭けられる。
しかし、一つ大きな問題が立ちはだかってしまう。
「直接会うなんて簡単に言うが、難易度高いぞ。ⅮⅯも解放されてないし」
一応各種SNSのアカウントは残っているが更新もしていないし、DMやリプを送ったところで見られている可能性は低いのではないだろうか。仮に見たとしても怪しさしかないメッセージに返事をしてくれるのか……?
「あー、それなら大丈夫だよ! 目代くんの家の近所の人だから」
「それ大丈夫なのか?」
「だいじょぶだいじょぶ無問題!」
「ノリ軽ッ⁉ 仮にも自分のプライバシーを何だと思ってるんだ」
配信復帰云々の前にネットリテラシーを教えるところから始めたほうが良い気がするんだ。
推しとか推しじゃないとか以前に、だ。
「あ、ちなみに私の存在は内密でヨロシク!」
「もとより言うつもりはないから安心してくれ」
推しが僕のスマホの中にいるなんて、他人からしたら妄言も甚だしい。速攻、頭の病院を紹介されることだろう。スマホもパソコンも触れない空間に放り込まれるなんて地獄以外の何物でもない。
「で、誰なんだ? もくずの魂は」
「天谷汐里」
「え……?」
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