愛しい君と運動会

 やあ、元気にやっているかい?

 もう皐月さつき五月だよ。

 新緑が萌黄色から深緑に変わり始める時期になったよ。

 もうしばらくすれば、あの鬱陶しい梅雨がやって来るよ…たまらないね。


 知らなかったんだけど、五月は運動会をする学校が多いんだね。

 先月から勤めるようになった、くだんの某有名女子高等学校なんだけれど、母の日に合わせて運動会をするんだよ。

 驚いたね、運動会なんて秋にやるものだとばかり思っていたからねぇ。

 ゴールデンウィーク明けに実施するという暴挙、おまけに運動会が終わった途端に中間考査が待っている…。

 誰が考えたんだろうねぇ、このデスマーチのようなスケジュール!

 それを笑顔でやってのける女子生徒達の何とたくましい事か…ただただ頭の下がる思いだよ。

 そういえば、君もこの学校の出身だったんだね。

 卒業アルバムで知ったよ…まぁ、可愛らしいことこの上なしだね!

 …ふふふ、君が嫌そうな顔をしているのが目に浮かぶよ。


 そう言えば、運動会の借り物競争…あれって、何かの罰ゲームなのかい?

 やたらと私が呼び出されたんだけれど…。


 えっ?呼び出された借り物の名称は何か?

 そうだなぁ…確か「変わり者の先生」とか「気難しい先生」、「授業が解り辛い先生」、「小難しい先生」…何となく、生徒たちが私をどう見ているのか分かったような気がするよ。

 そういえば、バレンタインの時にチョコレートをくれた女子高生が、この高校の生徒だったんだよ…道理で制服に見覚えがあったわけだよ。

 その娘と仲間内の娘達がやたらと私を引っ張り回していた気もするんだよねぇ。

 これって、女子校名物のイタズラか何かなのかなぁ?

 先輩であるところの君の意見を是非に聞いてみたいところだね。


 はぁ、取り敢えず今日は疲れたよ。

 若さ溢れる乙女たちに連れ回されるには、私は少々歳を取りすぎているんだよね。


 さて、要件は語り終わったので、この手紙はここまでとするよ。


 それじゃ。


 愛しい君へ

 変わらぬ想いと共に

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