消える
僕はようやく意を決して重い腕を動かすと、机上の銃を手に取った。自分を殺してやろうと決心してから長針は既に反対側へと倒れている。銃の撃鉄を半分下ろし、弾倉が回転する状態にする。チ、チ、チ、チ、と弾倉を一発分ずつ、少しずつ回転させ、ローディングゲートから空の薬莢を一つずつ取り出していく。チリンチリンと薬莢が地面にぶつかって軽快に跳ねる。その呑気な響きが部屋中に木霊した。机に置いた箱を取り、上蓋を開けて新品の弾丸を一つ取り出す。この一発がやけに重く感じる。銀入りに輝く先端は鈍い鉄の匂いを発していて、不気味だった。僕の手は震えた。装填することが出来ない。弾丸がローディングゲートを避けているようだった。僕は右手で弾丸を握り、左手で右手の震えを押さえて、ようやく一発を装填することが出来た。弾倉を一発分回転させ、込めた弾を銃口の位置にセットする。撃鉄をカチッと鳴るまで完全に下ろす。僕は銃口を自分に向け、親指が引き金の位置に来るよう持った。銃口を自分の口で咥える。リボルバーの細い銃身が思ったより深く口内へ入り込み、喉を突いたので、僕はえずいてしまった。銃口を一度離して、吐き気が収まるまで待つ。深呼吸をして、もう一度口の中に突っ込む。銃身を舌で固定する。クセになるような、年季の入った鉄の苦味がする。僕は目を閉じ、照明の仄かな光を瞼越しに感じた。僕は四回大きく鼻で息をした。そして、五回目を終えた瞬間に引き金を引くと、全てが消えた。
断片 トロッコ @coin_toss2007
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