三百三羽 ☆ リュリュエル、悲鳴!

「使い物にならなきゃ殺されるか、一方的に隷属の契約をされて使い捨ての兵隊か奴隷さ!

あのとき……逃げ遅れた妹を助けようとして、とうちゃんと妹が殺されて。

俺は、かあちゃんとねえちゃんに、せまい床下貯蔵庫に隠されて……怖くて……動けなかった……

ちくしょう!」


「小さいときのことだからしょうがないもな。

もな? にいちゃんに行き場のないところを助けてもらったのはこの後もな?」

「悲しいことが起こってしまったんですね」


「俺だって、いつまでも小さいままじゃない!

にいちゃんやケモナに戦い方を教わったし!

もうすぐ、みんなを助けに行くし!」


「がう♪ あーやもぺろぺろする♪」


「にっこにこだし!

お前、意味わかって言ってるし!?」


「おなかすいた?」


「絶対に意味わかってないし!

もうおなかすいたの!?

あんなにおなかパンパンだったのにスリムになってるし!?

トイレ行ってないよね!?

あの量はどこに行ったし!?

どんだけ食べるの!?」


獣人のリーダー「みんな! 代表者だけ集まってくれ!

できればケモナも!

新しくここに来たみんなは、申し訳ないが少し待っててくれ!」



陸地に集まった獣人の皆さん、なにやら激しくご相談。

リーダーさんと中心にいるのは魔族さんが数人です!

ミノコ様も輪のはじっこで大興奮なご様子。



「よっし!

魔族と手を組むことになったし!

これでみんなを助けにいく足がかりになるぞ!」


「魔族と手を!? なんで!? ケモナ、どういうことよ!」


「この世界でも人族と魔族が戦をしてるもな。

国家を持たない獣族は板ばさみになってるもな。

人族からは獣人狩りにあったり脅迫されたりで兵力や労働力にされてるもな。

それに怪しい実験もされてるらしいもな」


「実験てなによ?」


「よくは分からないもな。

魔族たちは女、子どもの庇護を約束に獣人を兵力にしたいもな。

ここははぐれ獣人たちの集落だけど、魔族がしっかりスカウトに来てるもな」


「魔族ね。魔族もいろいろいるみたいだけど、信用できるのかしら?」

「ほとんどの人族よりは獣族にやさしいもな。

でも、結局は戦に利用されるから、手を組むことには賛成したくないもな」


「なんでだし!

いつまでも逃げてられないって、みんな言ってるし!

魔族といっしょに人族をやっつければ、獣人のみんなが助かるんだ!

かあさんやねえちゃんも助けられるし!」


「……みんな仲良くするのが一番もな。

戦わずに解決する道を探したほうがいい。

でないといずれは……

いまならまだ、それができるもな」


「だってケモナ!」

「よしよしミノコ、なでなでするもな」


「ケモナ〜〜〜!」

「…………

……………

あん!

どこ触ってるけも!?

こそばい!?

もふもふしすぎけも!?」


「こんぐらいしないと気持ちがおさまらないし!」

「あーやもぺろぺろする〜♪」


「もふもふともふもふともふもふがもふってる……

もふもふかわいいがすぎるわ!」

「もふもふ天国ですね!」


「きゃあああああああ!」


つんざくもふもふ婦人の悲鳴!


ぶわっ!

草でできた水上ハウスから炎があちこち燃え上がってます!


見張りの獣人「敵襲! 敵襲〜〜〜!!!」

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