二百九十二羽 ☆ リュリュエル、逆鱗!

「きゃああああああああ!」


「ミーノ! ミーノの逆鱗に触れおった!」


「わたしのミーノ、ごめんねえ……

わたしもお仕事しないといけないんじゃないかい?

あわあわデートで埋め合わせをさせてね?

神器はもらっていくじゃないかい。

ミジウノじいさん、通らせてもらおうじゃないかい!」


「通らせんわ! 手下ども!」

「無駄なことをするんじゃないかい?」


シーバ様を殴りつけるミジウノ様たちゴーストさんたち!

実体のない体を通り抜けて宝物庫から、ささっと立ち去るシーバ様!


「ううう……

う、うううううう!」

「ミーノちゃんの様子がおかしいわよ!」


「聖なる光を全身から放つミーノ様のお姿が大きく細長く!

ふぃわわわ!?

背びれに尾びれ! 大きく美しい、神々しさを感じるシーサーペントな海龍さんになっちゃいました!」


「なんだか目つきがやばくない!?

エンジェルフィストスプラッシュ!

やっぱり一撃じゃ割れない! なんて弾力なのよ!

きゃあ!?」


「ふぃわ!? 殴った勢いで弾むフィスエルバブルが、ボクのバブルに弾んで目が回りますぅ〜!」


ぎゃおおおおおおおおおお!


「ミーノ! やめんか! 暴れるでない!

壁が! 天井が!」


「なかなかに広い宝物庫ですが、巨大な海龍さんが暴れるには狭いですね!

天井に床にがれきで崩れていっちゃいます!」


「このままじゃ生き埋めよ!

逃げた方がよくない!?」


「じゃが、このまま放ってはおけん!

下手をすると近くの港街やらにまで被害が及ぶかもしれん!

街に被害……そうじゃ! 思い出した!

あの日の大嵐はミーノの力!

ミーノは魔神の軍勢とやり合っておった!

魔神の封印に抗うミーノはシーバに暴走させられて……

ミジウノ大海賊団は、ミーノに港街を攻撃させないようになんとかしようと……

港町を守ったはいいがわしらは……

海のもくずとなったんじゃ……」


「ミジウノくん! 肩を落としてる場合じゃないわよ!

なにか方法はないの!?」


「港町に向かわせてはいかん。

その上で、ひたすら待つしかないかもしれん。

じゃが、正気に戻るまでとても待ってられん。

気絶させるか……殺すだけじゃ!」


「無理! そんなの無理に決まってるじゃない!

こんな泡の中で、暴れる海龍をよけるだけで精一杯よ!」


「まったくその通りじゃ、なんとかできるくらいなら、わしら死んどらん!

だめじゃ! 崩れる!

わしらの思い出の神殿をこれ以上壊すんじゃない!」


「ん〜〜〜?

ダメ元でやってみましょう!

エンジェ〜〜〜ルバッグ!

おしりさんが落とした支配の龍笛です!」


ピーっと吹いたつもりがスカ〜!


「あれれ〜? やっぱりだめですぅ」


「支配の龍笛じゃと!?

神殿のレリーフに記されとったやつか!?

よこせ!

わしは音楽家でもあるんじゃ!

笛ならまかせろ!」


「ですが、あわあわが割れないんですぅ」


「奥義の連発はきついけど!

耐えてよ、わたしのボディ!

我が発する言の葉は 我が力へと昇華するものなり

聖なる大海よ 母なる魂よ 我が拳に宿りて 我が天力と成せ!

天勁拳極意! 双星双龍掌!」


流麗な掌底の数々が泡を打つ!

左右に向けて同時に放つ拳と羽の掌底!

パチンと割れる泡!


ぎゃおおおおおおお!

ガラガラガラガラッ!


「天井が崩れる! リュリュエルは!?」


「ふぃわ!? これは大チャンス!

バブルさん、ぽよぽよぽよんと転がってください!」


ハムスターみたいにころころ!

崩れる天井に押しつぶされて!

泡がバチンと割れちゃいました!


「ぎりぎりがれきをよけて脱出です!」

「ぎりぎりすぎよ!

もうちょっとで二人とも下敷きになってた!

あちこち破壊されたせいか聖力が弱まってる!

なんとかするわよ!」

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