三百十九羽 ☆ リュリュエル、未来!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


パウダールームで鏡を見つめるフィスエル。


「ボクのって! 一番て……!

みんなの前であんなこと……リュリュエルのばか!

そ、そんなにうれしくないもん!

で、でも……か、顔がにやけちゃう〜〜〜

やっぱりうれしい! うれしいのよ!

わたしってやっぱりリュリュエルのことが、す、すすす、好きなの!?

でも! わ、わたしはどうしたらいいの!?

誰か教えて!

…………

リュリュエル……たまにだけど、言ってることが変なときない?

ほんの、ほんの少し、雰囲気が変わるときがあるような……

黒い羽に銀髪……なんで頭にちらつくの?

痛っ!

思い出そうとすると頭に痛みが……なんで?」

(なんでかは百四十五羽を参照してね!)


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「歌だの演技だの、いまはそんな話はいいじゃろ!?

ダメプロデューサーは邪魔じゃ!

あっち行っとれ!

お菓子なタバコでも舐めとればいいんじゃ!」


「デヴィがあいかわらず俺に冷たい!

不思議系ロリババァって言ったの根に持ってる!

路上でスカウトして売れっ子アイドルにしたの俺なのに!

いいよ! 俺はあっちに行ってるよ! へんだ!」


手に持った花がなぜか山のように増えながら、ボクたちに渡す無精ヒゲさん。

部屋の隅でどよんと丸まってます!


「すねちゃいましたね。

無精ヒゲを生やしたジャージ姿なおじさま、耳が長くてお肌が黒いですけどなにかの種族なんですか?」

「ユキちゃん、あれはダークエルフさ!」


「身ぎれいにして黙ってればイケメンそうなお方です!

さっきのライブ。一番前に立ってダミ声でお二人を応援してませんでした?

どちら様です?」


「あはは〜。歌のお仕事でお世話になってる偉い人。

名前はイオス・クゥセカさん。

なんか、歌で世界を救うっていう夢があるんだって!」

「なんだか、そこはかとないお名前ですぅ〜」


「夢は素敵さ! うちは微エロが全人類の夢さ!」


「にひ! やさぐれてるけど、仕事に厳しくていい人だよ?

おかげですっかり歌もダンスも覚えちゃったし、ファンサービスの仕方も教わっちゃった。

小さい女の子やかわいい女の子を見ると、すぐにスカウトしまくるような変態だけど」


「ドジっ娘ナユが変態って言った!

俺は、未来に輝くアイドルの卵にしか声をかけないもん!

ほら! 花束みんなにあげる!」

「ドジっ娘じゃないもん!」


「もう花で埋めつくされるわよ!?

どっから出してるの!?」

「すっきりしたさ?」

「……うん」


「ぐぅ」

「リュリュエル、自分で聞いといて一瞬で寝てますね。

さすが落ちこぼれです」


「興味ないんでしょ。ほっとけばいいわ。

ひゃわっ!? 転ぶ!?」

「フィスエル、大丈夫ですか?

おトイレから戻って早々、気をつけてくださいね?」


「あ、ごめんねユキちゃん。うっかり手をつかんじゃったわ。

(リュリュエル、また寝てる……さっきのドキドキが止まらないよ〜!)」


「ふ〜ん……フィスエルってそうなんだ」

「ん? なんのこと?」


「別になんでもないですが……知られたくないことがあるなら、わたしに触らない方がいいですよ」

「触っちゃダメさ!」

「?」


「フィスエル、お帰りなさい!」

「一瞬で起きたさ!」


「ひゃっ!? た、ただいま……(う、うつむいちゃだめ! で、でも顔が熱くて!)」


「まったくよう!

お前ら! 俺の目に狂いはねぇはずだ!

絶対に俺がプロデュースしてやる!

デビュー間違いなしのお前らを記念に写真を撮るぞ!

ツンデレ! 早く座れ!」


「だからツンデレって誰のことよ!?」

「ほら! ツンツンしてないで笑えって!

世界を救うのは!

さん、に〜、いち、アイドル!」


カシャっとパシャリ!


「ひひ! 初々しいな!

みんな、いい表情じゃねぇか!

ひとりだけ、誰かさんを見ながら顔が赤いけどな!」


「誰のことよ!?

ふと思ったんだけど……なんでここにいるのは女の子ばっかりなの!?

しかもすっごいかわいい美少女ばっかり!」


「さすが婿殿じゃの!」

「わたしはかわいいですよ」

「うちももちろん、微エロかわいいさ!」

「あたしはかわいくなんてないよ?

フィスエルだって、リュリュエルにお似合いなくらいに一番かわいいよ!」

「ナユ! お主、フィスエルばっかり応援しとらんかの!?」


「ひゃわ!? も、もうその話はいいから!

話をふったわたしがばかだった!

それよりも!

脱出ってどういうことよ!」


「そうじゃ! ユキ殿、話を聞かせてもらおうかの!」


「殿はなくていいです。

それでは皆さん。

作戦会議をしたいと思います!」

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