二百七十六羽 ☆ リュリュエル、人形!

「あの天使さん、おなかにビュービュー風が通るほど、でっかい穴が空いてるけど大丈夫なの?

血もろくに出てないし、よく元気に生きてるな」


「ん? たしかに!

痛みは強烈だが心も体も問題なく活動できるではないか!

これがバイオボディか!

生身にくらべて操作性はまだまだだが、なんという革命! もはや不死身!

これなら天界の威光をさらに拡大できるというもの!」


「そんな!? 大穴開けたのに!?

胸がとっても軽くなってますわ! がび〜ん!」

「がる〜ん!」


「バイオボディ? ニュージェネバイオボディとは違うのね?」


「その通りだ!

貴様のボディのかけらから得た情報を元にエンジェルオートマタの開発に着手!

(二百二十三羽を参照するがいい!)

エンジェル開発部に数百年をかけて開発させた!

おそらく技術的には遠く及ばぬが、コールドスリープしてまで長らえたかいがあったではないか!

魂を転生させたこのボディがあれば半永久的に活動できる!

これで実績ができた!

神への道もまた近づくというもの!」


「エンジェル開発部? わたしの知る天界にそんなものないわ。

もしかしてとは思ってはいたけど、古代に転移してからまだ数百年後なのね。

ていうか、わたしのボディのかけらからって……

なんかすっごい歴史に関わるような大失敗しちゃってる気がする!

聞かなかったことにしてもいい!?」


「ねえねえ。バイオとかってSFみたいなこと言ってるけど、フィスエルたちの体って、もしかしてアンドロイドかなにかなの?」


「マオくん、長いこといっしょにいるのにいまさら?

わたしたち、食事はするけどトイレに行ったりしないでしょ」

(ずいぶん前ですが、三十六羽を参照してください!)


「たしかに!」

「食べ物は全部聖力などに変換できるんですよ!」


「まあ、わからなくて当然かしら?

そうよ。わたしたちの体は人形。

アンドロイドみたいな完全な機械人形じゃなくて、特殊なたんぱく質やアミノ酸で生成されたニュージェネレーションナノバイオボディよ。

魂は転生させた本物だし、体の構成は生身と似たようなものよ?」


「知らなかった!

すっごい未来っぽい感じ!

ここってファンタジーな異世界じゃないの!?」


「科学技術が進んだ異世界などもあるってことですね!」


「貴様ら、いい機会だ!

エンジェルオートマタの試運転に貴様らも標的に加えてやろう!

ありがたく思え!」


「ありがたくないですわ!

こちらの魔王マオ様にかかればお前たち極悪天使なんて一撃ですわ!

覚悟するのはあなたたちよ!」


「アイちゃん!? めっちゃ俺のこと指さしてる!?

いやな予感しかしないんだけど!?」

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