二百七十九羽 ☆ リュリュエル、時代!

「アイちゃん!? いくらショックだからって胸をはだけてまで見ようとしちゃダメよ!?」


「アイちゃんの聖域はおっきくてもちっさくても母性たっぷり!

俺はどっちでもいける派だよ!」


「マオ様……わたくし感涙ですわ!」


「マオ〜♡」

「うわ!? ソードモードのせ〜まちゃん!?

ちょっと待って! 俺、逃げる!」


「魔王マオ様! わたくしも追いかけますわ!

お姫様抱っこしてくださいませ!」

「わっふ〜!」


「なんとか終わったわね。

ところでさ……リュリュエル。

あんたの聖力、天使になったばかりの頃にくらべて、とんでもないことになってない?

あんたもちゃんと分かってるわよね?

聖力っていうか……それ……もしかして神力?」


「ピ〜ピピ〜ピ〜♪」


「口笛吹いてごまかすな!

はあ〜……どれだけいっしょにいると思ってるのよ?

さすがに分かるに決まってるでしょ!

あんたの神バッジ、昇級試験のときに持ってくの忘れたでしょ?

裏に代行って書いてあるのを見たの。

あんたのいなかったこの一年、ずっと考えてたんだけど、あんたの力ってそれのせい?」


「ばれちゃいました! てへぺろ!」

「あんた、とぼけたふりして自分でも分かってたのね」


「ん〜〜〜? あれこれありましたからね!

さすがのボクも分かっちゃいますよ!」


「まあいいわ。

なんでそんなもの持ってるのか知らないけど、あんたはあんただものね。

わ、わたしはあんたのこと、わ、分かってるつもりだもの(ぼそり)」


「フィスエル、やさしい〜〜〜!

さすがボクのフィスですね!」


「ひゃわ!? は、恥ずかしいから抱きつかないで!?

(愛称呼び、うれしい!)

そ、それはともかく!

天使人形のしっちゃかめっちゃかな攻撃で森も砦もめちゃくちゃね!」


「そうですね! なんとかしないとですね!」


「なんとかね〜。

まずは砦の再建だけど、急には無理よね?

森林もめちゃくちゃだから木材の確保もむずかしそうだわ」


「あのさ、思ったんだけど!」

「マオくん、帰ってきたの。

みんなにべったりされてうれしいわね?」


「痛いし、やわらかいし、大変だよ!?

アイちゃんって、レベルがすっごい上がっただろ?

砂以外にも石灰石とか粘土とか作れないかな?」


「え? ええ、わたくしの得意とするところは、砂をはじめとした土や石などを生成する魔法ですが……」

「わふん?」


「マオくん、三人に追いかけられながら、何を思いついたのかしら?」




「花がきれいだな〜!」

「あたり一面、輝石カモミールが満開ですね!」

「花言葉は、逆境に生まれる力だっけ?」

「はい! 一年ぶりに咲き輝いて美しいですね!」

「もう一年も経ったのか〜。

はじめて輝石カモミールを見たのは、俺とリュリュエルが出会って一年後のことだよな……

なんかこのやりとりって懐かしい!

せ〜まちゃんもシャオもいつもの大剣に戻ったきりだな」


「それにしても立派になったわね!

砦っていうよりも立派な城と城下町じゃない!

マオくんにアイちゃん、職人さんたちもやるわね!」


「コンクリートなるものを生成、建造物として直接的に構築するという、マオ様のアイデアのおかげですわ!」

「わふわふ!」

「バラエティ番組で経験した知識のおかげなんだけどね」


「公共浴場や上下水道に公道整備、ニポーン並みの環境ができちゃったわね?

森の繁殖力がすごくて街の拠点を少しずつ移動しながらだったけど。

聖域を感じる大森林を背景に雄大だわ!」


「わたくしの聖域も栄養たっぷり元通りです!」

「わふ!」


「そうですね! 一時は暗黒森林になりつつあった森が、いまや大森林フォレバストのように範囲を拡大しています!」


「フォレバストですか?

なんだか個人的にとってもいいネーミングでございますわ!

今日から我が国をお護りいただく聖なる森として、その名をいただき崇めましょう!」

「わふん!」


「魔族が聖なる森を崇めるってどういうわけかしら?

フォレバストって、これから生まれるのか、もう存在していると思うけどいいの?

闇の渦はまだ完全になくなったわけじゃないけど、天宙世界樹も一本だけすくすくと成長をはじめてるし、そのうち浄化もできそうよね?」


「はい! とっても立派な聖なる大森林になること間違いなしです!」


「さてと……ここまで立派になったんですもの。

そろそろお別れね。

リュリュエル、次元の裂け目はちゃんと残ってるのよね?」


「はい! しっかり大丈夫です!」

「これでやっと元の時代に帰れるわ!」


「アイちゃん、お別れだね」

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