二百六十六羽 ☆ リュリュエル、無駄!

「あいかわらずエンジェル懐中時計で天界とやりとりできないし!

天界に戻ることも考えたけど、みんなをほっとけなかったしさ!

行くのもなんか怖かったし……

ねえ! わたしたちって、まだ過去にいるの!?

この一年、みんなのこといっぱい手伝ったわ!

下界に干渉しまくりよ!

でも! あんなことがあったじゃない!?

これでいいのよね!?

わたし……わたし……リュリュエルに会いたかったの!

ぐすっ!」


「こちらでは一年が経っていたんですね?

ボクもボクのフィスエルに会いたかったんですよ?

よしよし。頭をなでなでしちゃいますよ?」


「……また、そういうこと言う……

(なでなで……う、うれしい!)

もう……それでもいいけどさ……」


「ふわ? いまなんて言いました?

もう一度、言ってください!」


「なんでもない!

いつまでも抱きついてなくていいわよ!

ふん!!!」


「あらあらお顔が真っ赤で、仲のおよろしいことで。ラブラブがうらやましいですわ!」

「ひゃわ!? アイちゃん!? ラブラブじゃないわよ!?」


「アイちゃんさんですか?

お胸がたぷんすぎる宰相さんですね?

えっと〜? 殿下さんを悪く言う怪しいお方なんです?」


「いや、アイさんはみんなのために、とってもがんばる宰相なんだ!

俺もいっしょにずいぶんがんばった!」


「当然です! わたくし、先代魔王様には特別な大恩があるのです! ぽ♡

ところでマオ様。また森へとおもむいていただけるのですか?」

「もちろん! みんなが安心して暮らすには、まだまだ資材が足りないからな!

昼ごはんまでまだ時間もあるし、すぐに出発にしようと思うんだけど?」

「しゅっぱつ〜」


「そういえばさ。

奥に行ったら恐ろしげな洞穴を見つけたんだよな。

とりあえず入らないで戻ってきたけど。な、てふてふ?」


「ほらあな〜、なつかしい〜、いきたい〜」

「行きたいの!?

俺、怖そうなとこはあんまり行きたくないけど!?」


「危険がありそうなら放っておくともっと怖いわよ?」


「恐ろしげで懐かしい洞穴ですか!

ワクワクドキドキで〜〜〜す!

さっそく行ってみましょう!」




「うっわ〜おぅ!

黒い森の中に、黒いツルでおおわれて、なおかつ黒く苔むした不思議な空間!

茂りに茂って密集した樹木が、まるでぽっかりと横穴があいているようです!

奥へと続いているようですが……」


「マオ様、わたくし怖いです!」

「アイさん、大丈夫?」

「はい……大丈夫です♡

ですが、わたくしもちゃんづけでお呼びいただいても……」


「そう? じゃあアイちゃんて呼ぶよ」

「マオ様からのちゃん呼び!

胸がしめつけられますわ!」


「しめつけ……こぼれそう……

俺よりだいぶ年上のお姉さんだから、ちゃん付けはないなって思ってたんだよね」

「年上! ぐっさ〜〜〜!!!

わたくしの心にダメージが!?」


「年増美人の無駄乳にクリティカルヒットしてるわ」

「年増!? 無駄乳!? がび〜ん!」


「怖いなら来なければいいのに。

魔族のくせに魔属性の植物を怖がってどうすんのよ!」


「わたくしだって役に立つからです!

ですが、怖いものは怖いのです!

ね、マオ様!

怖いからぎゅうっとくっついちゃいますよ!」


!!!!!

ゆらゆら!


「ぷるぷるやわらか!

無駄ってすてき!

いや、そんなに抱きつかれても。いざってときに戦えないよ!?

せ〜まちゃんがすっごい怒ってるし!

オーブが光って、ゆらめきがなんだか激しい!」


「てふてふ〜、ここすき〜、はいる〜」


「てふてふ!?

すっごい勢いで穴の中に入っちゃったよ!?」

「追いかけるしかないですね!」

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