二百六十五羽 ☆ リュリュエル、色目!

「お元気そうでなによりです!

黒々した森林を背に立派な砦と、木造りの防壁も建設中なご様子!

お城を思わせる、そこそこ立派な館を中心にお住まいが扇状に並んでいます!

あまり大きくない川に沿って畑も開墾しちゃってますね!

ところで、魔族な皆さんに人族な皆さんたちはどちら様でしたっけ?」


「エンジェルフィストヒート!」


「ふぃわ!? 熱い炎の拳がおなかにぽかぽかじんわりです!

フィスエル、腕を上げましたね!

ダメージはありませんが大幅なレベルアップを感じちゃいます!」


「なにその上から目線!?

ふふん! 元々、修行はかかしたことないけど!

あのキモ眼鏡イケメン悪魔にやられてから必死に鍛えてるもの!

当然よ!

って、それはともかく!

カナリコーダイ国よ! 時を超えて古代に行ったときの魔人国の人たちよ!

ユウくんが倒しそこねた魔王と同じドレイン技を使った殿下くんが暴走したじゃない!

やばくなって、神の雷で死にそうになったときの人たちよ!」


「ああ〜! ぽんと手をたたいて!

それでシャオ様はどうしたんです?」


「安定のリュリュエル! 絶対、覚えてないでしょ!?」


「シャオなら……ここにいるよ。ほら聖魔剣を見てみて?」

「みて〜」


「エメラルドに輝くオーブが、せ〜まちゃんの柄に埋め込むように装飾されてますね?

以前はありませんでしたが?」


「これがシャオなんだと思う。

あの戦いのとき、せ〜まちゃんとシャオが合体して一人の人型に変身したろ?

ここに転移したときに元の大剣に戻ったんだけどさ。

シャオは元の姿には戻らなかったんだ。

命をかけて俺のことを支えるなんて言ってさ。

困っちゃうよな……」


「マオくん、気を落とさないで。

剣になったまま、あれから人型にならないのよ。

せ〜まちゃんがよろこんだり、やきもちとかするのは分かるんだけどね。

ここに来てからは、宰相のアイちゃんや魔族の女の子たちのアホっぽい色目にぷんぷんしてるわよ?」


「アホっぽいって失礼ですわ!?

純愛です!」


「オーブになったシャオにもなるべく声をかけてるんだけど反応なくてさ。

シャオ、話ができなくてさみしいよ?」

「さみし〜」


キラキラ!


「なでると剣にはまったオーブの輝きがゆらめいているようですよ?」

「ああ。これがシャオの返事かもしれないな?」

「へんじ〜」


「それにしてもリュリュエル!

あんたどこ行ってたのよ! 一年も姿を消しちゃってさ!

あんたがいない間に砦づくりや開墾に、なんでか次から次に出現する最恐暗黒魔獣退治!

マオくんやアイちゃんたちと一緒に、ほんと大変だったのよ!

それに!

それに!

どんだけあんたのことを心配したと思ってるのよ!?」


「ふぃわ!? じんわり、涙!

フィスエル、泣かないで!

心配かけてごめんなさい!」


「ひゃわ!? 安定の抱きつき攻撃やめて〜〜〜!」

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