二百六十四羽 ☆ リュリュエル、本命!
「嘆かわしくも気狂いを起こされた王太子殿下は行方不明。
麗しのヨーメ妃殿下候補も、ほかの王族もお隠れあそばしております。
奮闘した四将軍も神族との戦で散ってしまいました。
生きながらえたわたくしも宰相として尽力しておりますが力およばず。
カナリコーダイ国の民、我が国に侵略をしかけた人族らとの無益ないがみあいを見事におさめたマオ様。
誰からも認められているマオ様をおいて、我らを導いてくださる方は誰一人としておりません!
マオ様と魔王様、お名前の聞き間違いからはじまったとしてもです!
つまりマオ・ウォタースゾ様は魔王様ですわ!」
「だからって魔族のつのをつけないで!?」
「ちっ!」
「舌打ち!?」
「マオくん。もうあきらめた方がいいんじゃない?」
「フィスエル!?
きみ、天使だよね!?
魔王を認めちゃっていいの!?」
「ここでの魔王って結局、カナリコーダイ国の言い方なだけなんだし?
王様と同じじゃない。
それにここの魔族たち、みんないい人だしさ」
「俺って勇者として異世界転生したんじゃなかったっけ!?」
「それにしてもマオくん、開墾や堆肥の知識だったり、砦の石組みや建築方法やら、蒸溜水の作り方とかサバイバル知識やら、ここの職人さんたちと協力してずいぶん活躍したわよね?」
「ああ。前に話したとおり、俺ってダンサーとして芸能活動してたわけだけどさ。
バラエティ番組のあれこれでいろいろ勉強させてもらったことあるし、フォレバストで何年も実践してたから。
でも、安心して暮らせるようになるにはまだまだ先だろ?
勇希ちゃんを探しに行きたいけど、みんなのことほっとけないしなあ」
「やはりマオ様はすばらしいですわ!
我らを見捨てることなく、そのようなおやさしいお言葉!
このアイ・ジンジャー、どこまでもお慕い申し上げ! お仕えさせていただきます!」
「だからつの!」
「ちっ!」
「また舌打ち!?」
「この一年で、宰相ちゃんまですっかりメロメロね。
本命が誰だか知らないけど、いっそのこと愛人いっぱい増やしちゃってもいいんじゃない?」
「俺、そんなことしないよ!?」
「このアイ・ジンジャー!
その程度の愛人じゃ、いやです!
その……できましたら正妃で……ぽっ♡」
「顔を赤らめながら、つのつけないで!?」
「ちっ!」
「舌打ちやめない!?」
「マオくんたら、せ〜まちゃんにシャオちゃんにアイちゃん、それに……ヨウメちゃんもさ。
出会う女の子ぜ〜んぶ撃破してるわね」
!!!!!
「せ〜まちゃんがぷんぷん真っ赤です!
皆さんお変わりありませんね!」
「あ〜、りゅりゅ〜だ〜」
「「リュリュエル!?」」
「天使様! その節は我らをお救いいただきありがとうございます!
フィスエル様の想い人ですね!」
「ひゃわ!?
ちょ!? なんで!? アイちゃん!?」
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