百六十四羽 ☆ リュリュエル、魔王!

「……遠い過去のこと。勇者の集団に敗れはしたものの、強靭な肉体ゆえめっされることはなかった。

苦慮した勇者どもは、聖王女の祖先である聖女に助力を求めたのだ。

精神と肉体に分かたれた俺は、まさに死ぬ思いで聖女の拘束から精神のみ逃れ、ある魔族に憑依したのだ。その後、元々二つで一つであった俺とチミの魂を分けただけのこと」


「ふえ〜、チミちゃんの魂、魔王様だったのだ〜。

それでつぎはぎだらけなのだ?」


「しばらく分かたれている間にすっかり子ども化しおって……チミが混じると精神年齢が下がりそうで心配なのだ。

ヤミエルとチミによって、この王国を支配したことは記憶に新しかろう。

禁書庫から得た禁書を解読することで、封印された我が肉体がここにあることがわかったのだ!」

「のだ〜!」

(五十九羽を参照してください!)


「禁書庫は王族しか入れんはず!」

「王よ、このチミによって傀儡と化していたこと忘れてはおるまい」


「黙って聞いていれば、貴様が魔王だと!?

確かに、チミをはべらす貴様とすべての計画を練ってはいたが!」


「ヤミエルか、遅かったのだ。シューティエル、聖王女を棺に」

「わかった! なんにしろ、この世界の魔王復活だな!」


棺に横たわる聖王女!


「パスコード<バーカバーカクソッタレマオウハズットネトケドアホ〜〜〜>

……気に食わんキーワードなのだ」


……パスコード確認 認証


「封印コンソール起動!」


……起動確認 正常に作動


聖王女が眠る棺の上に現れたスクリーンを操作する幻魔将軍!

闇の光で輝く古代の墓所!

広い空間に現れる巨大な多重立体構築式!


「悠久の時を経て、ようやく復活することができる!

この世界に混沌を! すべての生けるものに死の恐怖を!

もう……思い出すことさえできぬが、俺の大事なものを奪った神! 勇者! 世界に! 復讐をするのだ!!!」


多重立体構築式の中心に心臓から成形されていく魔王の肉体!


「復讐だと? 魔王もか……だが、本当に魔王を復活させてよいのか?

そもそもなぜ封印の地に魔王を復活させる機能があるのか?

でたらめ天使……貴様の思いにくらべれば、俺の復讐など……俺はどうしたらいい?」


「悩むくらいなら、魔王復活を阻止しちゃいましょう!」

「悪いことはいけないぽん!」

「でたらめ天使!?」


「神の使徒か。もう遅い! 我が肉体よ! いま一つになるのだ! チミ!」

「のだ〜!」


幻魔将軍から抜け出た精神体が闇霊将軍チミちゃんと融合しつつ!

魔王の肉体と一つに!!!

間近でシューティエルが期待の表情!


「やったぜ! これでこの世界は魔王のものだ!」

「ラルーナは!? 娘は生きておるのか!?」


「ふむ、角と装束がないとしまらんな」


自らの肉体を確認しつつ、漆黒の衣をまとい、頭に角を装着する魔王!


「ふぃわわわわわ!? 魔王が復活しちゃいました!

魔王様、超絶かっこいいです!」


「魔王である俺を様呼び? 超絶? 天使が魔王である俺をほめてどうする!?

力が足りぬ……シューティエル、貴様の闇力をよこせ。

デビルズドレイン!」

「なんだって!? きゃあ! あああああああぁ、ぁ、ぁ……」


魔王の手に頭をつかまれたシューティエルが、ゴトンと地に落ちる!

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