百四十二羽 ☆ リュリュエル、満タン!

「どうだった? あのキモ眼鏡イケメンとのダンスは?

女の子的にキュンキュンしちゃったんじゃないの?」


「ボク……ドキドキしちゃいました〜♡

それでですね!

ベル様からお誘いを受けたので、ベル様のお屋敷に行ってきます!」


「はい!? 突然、どういうこと!?」

「なんと!? まさかの愛の急展開!」




うおおおおおおおおおおおお!!!

澄んだ青空に響く怒号!

はじまった攻城であり防衛でもある戦!

上空、城の真上で戦況を見守る二人!


「なによ! リュリュエルったら! 人魚姫も四人組も放っちゃってさ!

キモ眼鏡イケメンのとこに行ったきり! ほんとに来ないつもり!?」

「しかし、これはひどい戦だ! 一粒の愛も感じられない!」


「確かにそうね。戦に愛もへったくれもないけど、騎士道精神とか戦の矜持なんてものがかけらもないわね。いかにも醜い。こんな争い、いやだわ。

騎士道精神があればいいってわけじゃないけど……どっちにしても、争いがなくなるわけないものね」


「マリン姫はもちろん、話に聞いた騎士殿たちとまるで違う!

残虐な戦いに愛がなさすぎる!

ああ!? 愛が足りなすぎる! これでは禁断症状が!」


「ひゃわ!? 抱きつくな! ほおずりするな! ボタンに手をかけるな!

どこに指を!? 

ひゃうん! ひゃ……いん……こら! やめんか! はあはあ!

き、禁断症状ってどういうこと!?」

(三十二羽を参照してください!)


「愛の満タン!!!」


「こんなときにやめて! もう!

まったく……

あんなにかわいくなった魔物たちも、ただただ恐ろしいだけね」


「まるで死に誘われているようだ。

なんと!? 社交パーティーで愛をささやいていた彼らが!?

これでは、戦が終わっても愛が残らない!

死者を量産するだけではないか!

フィスエル! やはり何かおかしい!」


「そうね……聖力をありったけこめて!

二人の天使の目でしっかり見るわよ!」

「愛にかけて!」


「「シンクロエンジェルア〜〜〜イ!!!」」


360度! 戦場を目がかすむほどに凝視する二人!


「「見つけた!」」


「なにあれ!? 空に浮いてる、あの大きな鐘はなに!? リンリンリィンってずっと鳴ってたの!?

全然、気づかなかった!

見つけたら見つけたで、甘ったるくて気持ち悪い! 何この音色!?」


「何者かがいるぞ! なんという愛のない禍々しさ!

全身、黒々しい姿に二本のつの! あれは上位悪魔だ!

いや、愛よりも上!?」


「おや? 見つかってしまいましたか。

特殊なステルス多重結界を張っていたというのに。

ヤミエルにシューティエル。そして、あのお方から聞いていたとおり、級に見合わずなかなか有能なようですね。

やはり、ミステリアスで不可解かつ美しい天使様の影響でしょうか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る