八十九羽 ☆ リュリュエル、野蛮!

「それにしても世界樹のふもとなんてよく来れたわね。

普通、こういう聖域や神域は多重結界があったりするのよ?

誰かの案内だったりがないと、わたしたち天使でもなかなかたどり着けないはずだし。

わたしだって、あんたにあげたアミュレットがないと、たどり着けなかったわ」


「マオ様が迷子になったおかげです!」

「この人がマオ……スキル<鉄壁の胃袋 毒素完全栄養変換レベルMAXダブル>をリュリュエルの手料理で獲得したっていう変態勇者ね」


「何そのスキル!? 始めて聞いたんだけど!?

変態って、初対面なのにこの天使様、失礼!」


「あんな殺人料理を食べれるようになるなんて変態もいいとこよ!

拳の天使フィスエル、7級よ。よろしくね、マオくん」

「よろしく! でも、殺人料理? 確かに最初は死にそうな思いだったけど、今はちゃんとうまいよ」


「うっわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「きれいなビブラートが長い! なんかすごい眼差しで俺を見てる!?」

「ボク、マオ様の胃袋つかんじゃいましたね!」




「エンジェルフィスト!」

「ふぅわっ! 全身で大地をつかんだ拳の一撃で! 巨大な世界樹の種を吹っ飛ばしてます! 罰あたり! 野蛮!」


「あんただけには言われたくないわ!

野蛮って言うけどね! 貯蔵庫に運ぶ手間が省けるし、修行の一環よ!

あんたこそ、ふよふよしてないで種を運ぶの手伝いなさいよね!」




「天使様お二人にもお手伝いいただけるなんて、ドライアドを代表してお礼を申し上げます」

「いいのよお礼なんて」

「そうですよ? がんばるのはマオ様とフィスエルですから!」

「あんたもがんばれば!?」



「ふう! 一通り終わったわね」

「ああ! 貯蔵庫がいっぱいになったな!」

「いっぱい〜」


「マオ様、汗が……世界樹タオルでやさしく愛情を込めておふきいたします」


「新緑のいい香り!

シャオのやさしさに包まれてるみたい……いや、でもそんなとこまで、ふかなくていいからね!?」

「きゃ!? いやですわ! わたくしとしたことが!」


「あきらか、わざとよね?」


「さすが、シャオサシャエルユウ様!

勇者様を支えてます!」

「どこを!? 勝手にやってなさい!

ふぅ〜、ちょっと張り切りすぎちゃったわね」


「ボクもいっぱいがんばりました!」

「がんばった〜」

「あんたたちはふよふよしてるだけで1ミリも運んでなかったわよね!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る