全てが解決しても相変わらず
ティアナとマルグリットがランツベルク城で保護されてから数日後、マルグリット達の両親と兄が違法とされている人身売買を
これにより、ファルケンハウゼン男爵家は取り潰しが確定した。しかし取り潰しのタイミングは、マルグリットとティアナが上級貴族の家に養子入りした後に引き延ばしてもらっている。一応貴族という身分であった方が、上級貴族に養子入りしやすいのだ。
そして人身売買に関与していないファルケンハウゼン家の使用人はランツベルク辺境伯家が次の雇用先を斡旋したようだ。
ちなみに、ファルケンハウゼン男爵家の両親と兄がティアナを虐げていた理由は、彼女が祖母と同じ髪と目の色で顔立ちも祖母に似ていたから。ファルケンハウゼン家の祖母は、両親が人身売買に手を染めようとしていた時に必死に止めていたのだ。しかし、両親は自分達に反対する祖母を事故に見せかけて殺し、人身売買に手を染めた。そして数年後に生まれたティアナが祖母に似ていたことにより、両親にとって忌々しい記憶を引き起こすのであった。それ
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「本当に馬鹿げているわ」
両親と兄の所業やティアナを虐げる理由をユリウス経由で聞いたマルグリット。心底呆れている表情である。
「奇遇だね、私も同感だ。ティアナを虐げる奴らは例え血の繋がった家族だとしてもゴミ以下だと思うね」
ユリウスのアンバーの目は心底冷えていた。
「さりげなく馴れ馴れしくティアナと呼ぶんじゃないわよ」
「良いじゃないか。ティアナと私は結婚することが決まったのだから」
いつものやりとりが始まった。
「ねえティアナ、本当にこの男で良いの? この男、とんでもない奴よ。ティアナの想像を絶するくらいの悪人よ」
「身に覚えのない誹謗中傷だね。ティアナ、姉君の言うことを間に受けてはいけないよ」
マルグリットとユリウスは言い争いながらティアナに詰め寄っている。
「えっと、お二人共、落ち着いてください」
ティアナは困ったように微笑む。そして一呼吸置いて話し始める。
「
ふわりと天使のような笑みのティアナ。ムーンストーンの目は輝いており、真っ直ぐ覚悟が決まっていた。
「そんな……」
マルグリットは膝から崩れ落ちる。
「ティアナ!」
ユリウスは嬉しさのあまりアンバーの目を輝かせてティアナに抱きついた。
「ユリウス様、お姉様もノルトマルク卿も見ている手前ですわ」
ティアナは困惑したような笑みである。
「ちょっと、ティアナから離れなさい! 困っているじゃないの!」
すぐに立ち直り、ユリウスに突っかかるマルグリットである。
「本当に相変わらずだな」
オズヴァルトは三人の様子を見守りながらフッと笑っていた。
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その後、マルグリットとティアナはユリウスやランツベルク辺境伯家当主のパトリック、辺境伯夫人であるエマと共に王宮へ呼び出された。
上級貴族への養子入りと王命による婚約の件である。
マルグリットはメクレンブルク侯爵家、ティアナはブラウンシュヴァイク公爵家に養子入りが決まる。
そしてメクレンブルク侯爵令嬢となるマルグリットはノルトマルク辺境伯令息であるオズヴァルトと、ブラウンシュヴァイク公爵令嬢となるティアナはランツベルク辺境伯令息であるユリウスとそれぞれ王命による婚約が決まった。これらの家の繋がりは国益をもたらすとのことである。
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王宮から戻り、ランツベルク城の庭園にて。
マルグリットとオズヴァルトが何やら話し込んでいる。
「知っていたとはいえ、マルグリット嬢に伝えていなくて申し訳ない。王命だから簡単に破棄することはできない婚約になったが……マルグリット嬢は俺との結婚に後悔はないか?」
気遣うような表情のオズヴァルト。彼はユリウスの策略により自分がマルグリットと王命で婚約することは知っていたのである。
「驚いたけれど、オズヴァルト様となら構わないわ」
マルグリットはクスッと笑う。
「だけど、やっぱりティアナはあの男と結婚してしまうことになるのね。というか、私達がそれぞれ別々の上級貴族の家に養子に入ったことで法律上姉妹ではなくなってしまったじゃない」
マルグリットは不満そうに頬を膨らます。
「マルグリット嬢はやっぱりそこに着目するのか」
オズヴァルトは「相変わらずだな」と安心したように笑う。
「それよりオズヴァルト様、そのマルグリット嬢という呼び方は他人行儀よ。貴方と私は結婚することになったのだから、普通にマルグリットと読んでちょうだい」
強気の笑みのマルグリット。ターコイズの目は真っ直ぐオズヴァルトを見つめている。
オズヴァルトはそんなマルグリットを見て、嬉しそうにアメジストの目を細めた。
「ああ、分かった。マルグリット」
するとマルグリットは満足そうに笑う。
「さあ、これからティアナに会いに行きましょう。とことんユリウスの邪魔をしてやるわ」
マルグリットは意気揚々とティアナ達の元へ駆け出した。
オズヴァルトはマルグリットのいつも通りの様子に安心したように微笑んでいた。
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