第2話 カードホルダー

初めてのモンスターと遭遇した。

戦闘職は高校3年になる頃、モンスターと戦闘訓練を行い。

そして専門職向けの大学に進学していき能力を開花させていくという。


高校2年の俺は戦闘経験はなく、周りを見渡しても武器なんて落ちていなかった。


じりじりと近付いてくるスライム。


モンスターとの戦い方は学んだことはない。

だが…それでも、なにもしないという選択肢はなかった。


スライムの中に見えた赤く光る玉っぽいなにかが見える。

目についたからというのもあったが…赤い玉に向かって拳を叩きつけた。


ぶにっとした普段触れることがないような感覚が肌を伝わって感じられる。

液状の皮膚の…その先にある赤く光る玉が弾けた。


水風船が弾け、どろりと地面にしみを作り――

一枚のカードが地面に残った。


カードを拾い上げると、いきなり箱っぽいものがもう片方の手の中に現れ吸い込まれていく。

これは一体…と思っていると、ゲームのステータスウィンドウのようなものが開いた。


ーーー

・スライム Lv1 HP5/5 攻:1 守:1 特攻:1 特守:1 スキル:なし

カードホルダー1/10枚

ーーー


急なできごとに理解が追いつかないが…これがカードホルダーの能力なのだろか?

よくわからないが、このカードは何か使えるのか?


頭の中に???しか浮かんでいないが…

箱からカードを取り出してみると、カードが見る見るうちに形を変えてスライムになった。


このスライムは襲ってくるでもなく、俺の言うことをよく聞いてくれた。

同フロア内で出てきたスライムに対しても、自ら戦いそして倒してくれた。




その後もスライムにスライムを狩ってもらっていたら、スライム自体のレベルが上がり、

カードホルダーにはスライム以外のアイテムが入っていた。

ーーー

×スライム Lv3 HP7/7 攻:3 守:1 特攻:1 特守:1 スキル:なし

・スライム Lv1 HP5/5 攻:1 守:1 特攻:1 特守:1 スキル:なし

・スライム Lv1 HP5/5 攻:1 守:1 特攻:1 特守:1 スキル:なし

・スライム Lv1 HP5/5 攻:1 守:1 特攻:1 特守:1 スキル:なし

・水

・水

・おにぎり

カードホルダー6/10枚

ーーー


カードから水を取り出すと500mlのペットボトルの水が出てきた。

スライムを狩ると水やおにぎりが手に入る…なんとも不思議な感じだが、これで死ぬことはなくなった。

お腹も空いていたので、カードのおにぎりを実体化させて頬張る…。


何時間ぶりかのご飯…めちゃくちゃうまい…。

無言になって最後の一粒まで食べきった。



すべてのスライムをカードから実体化させて周囲を監視してもらいながら…。

カードホルダーについてわかったことを自分なりに整理した。


1.実体化させたカードはカードホルダーの数の制約から外れる

2.モンスターのカードは実体化とカード化が可能となっている

3.実体化可能なカード数は4枚、それ以上の実体化はできなかった

4.モンスターをカードに戻すとHPが自然回復する

5.モンスターのHPがゼロになるとカードが消滅する

6.水やおにぎりのような消耗品は一度実体化するとカードが消滅する

7.カードホルダーが満タンの状態でカードが出現後、交換もしくは放置すると11枚目のカードは消滅する※消耗品だった場合は使うことも可能

8.モンスターを倒したカードだけ経験値を得るようになっていて、俺が倒してもモンスターに経験値は入らない



戦闘職や職人は、スキルを何度も利用することで練度が上がったり能力の幅がでると言われている。

また偉業を成し遂げることで、新たなスキルを覚えることがあるらしい。

偉業というのは人によって概念が異なるようなので、一概にこれをすればいいってのは無いらしい。

ただその現象をレベルアップというみたいなんだが…カードホルダーは練度を上げたり、レベルアップすると何かが変わるのだろうか?


スライムのカードしか入っていないカードホルダーを眺めつつ、スキルが発現したことに高揚感を感じていた。



だが…今いる場所が現実に戻してくる。


死の谷、この谷に落とされ地上に戻った者はいない。

スキル発動のトリガーがモンスターを倒すことなんて…こんなのわかりようがなかったはずだ。


本来、この場にいる必要がなかったと思うと腹の底から暗い気持ちが湧いてくる。

近くにいたスライムが首を傾げたような気がした。


傾げる首なんてないはずなんだがな。



毒気を抜かれ、その場でバタンと倒れた。

しばらく探索したが、出てきたのはスライムだけ、そのスライムも実体化したスライムが対処してくれることもあって…


精神的な疲れと、緊張の糸が切れて寝てしまった。


―――――――――――

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