第4話 クローバーの想い出 其の二
木綿さんはお姉さんだけど、絹さんの方が少しだけ背が高い。だからぼくはなるべく木綿さんの肩によじ登っていく。だって、ほんの少しでも楽がしたいからね。
『トゥインクル、アイシクル』
ぼくは覚えたての呪文を唱えながら木綿さんの肩の上に立って、ピカピカと光る星のスティックをくーるくると大きくまわすんだ。
するとキラキラと小さなダイヤモンドダストのような光がスティックの先から広がって木綿さんと絹さんの二人の頭の上から降ってくる。
もちろん二人にその光は見えないんだけど、その瞳からぽろりと溢れる涙は、まるで氷柱のように凍ってぱちんと弾けて消えていく。
「御供えのお饅頭を頂こうかねぇ」
「うんうん、温かいお茶でも入れようね」
さっきまで涙を溢していた二人は視線を合わせて目を細めて微笑んだ。良かった、ぼくはちゃんと魔法が使えるんだって、その時は本当に嬉しかったんだ。木綿さんの肩の上でぴょんぴょん跳ねてしまって、バランスを崩して落っこちそうになっちゃった。
ぼくが魔法をちゃんと使えたら、優しい風がお空から吹いてくるんだ。そして風が通り過ぎた場所には小さな四つ葉のクローバーがひょっこりと芽を出して、ぷるるんって葉っぱを広げる。
ぼくは木綿さんと絹さんにたくさん魔法をかけたから、お庭はクローバーがたくさん生えているんだ。まだ魔法をちゃんと使いこなせていなかった頃の事だったから、全部が四つ葉のクローバーではなかったんだけど。ここのお庭にはクローバーがたくさんあって、優しい風が吹くたびに葉っぱを広げて揺れている。
「あれぇ、また四つ葉のクローバーだよ!」
「あれぇ、ほんとだね! 幸せの四つ葉のクローバーだね」
木綿さんと絹さんは、庭で四つ葉のクローバーをいくつか摘んで小さな豆皿にお水を入れて浮かべるんだ。それを仏壇に飾って、二人で仲良く手を合わせていたなぁ。
二人の後ろ姿がとーっても可愛くて、ぼくはいつもニコニコとしながら眺めていたんだ。
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