第4話 政府

 コロナから回復し陰性後も、肺機能の低下や認知機能の低下、心筋炎、聴覚障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などが10%から30%の割合で後遺症として残っていると言われ、日本呼吸器学会が実態調査へ動くと聞く。

 無症状者が退院後に、肺炎で死亡した例もあるから、『コロナの2類はずし』は恐ろしい怠慢だ。

無症状者の自宅隔離は、仕事を続けたい人の希望なのか、以前にも無症状者が急変して死亡した事例があるのに、『コロナの2類はずし』をしたいがために、恐ろしい事を国民が忘れた頃に出して来る。


 政府は緊急事態宣言の間に、PCR検査を増やす事をせず、都道府県知事が独自に奔走している。都道府県は、資金不足から病床を減らす方向へ動いた。しかし、コロナ2波とみられる陽性者が急増の一途だ。感染症学会が、第2波と言った途端、政府の専門家分科会は2波か3派か分からないが、7月末をピークと慌てて言い出した。



 倫健は、眠る前に唐突に思った。結依にフェイスシールドを食事用に作ってあげようと。


           政府


            府  

                                                                                             

     广                             

               广                    

 亻     寸                广        

            亻     寸                

     付                亻     寸

               付                    

                         付


まだれ   广    どんどん壊れる

  

   にんべん   亻  万華鏡のような動きだ


     すんづくり   寸  いつしか壊れて行くものを綺麗と思わされるのか


「今日も起きられた。生きている」

と、倫健は実感した。


「魔法の薬を飲んでいるからかなぁ」

と思い、倫健は微笑んだ。


 寂しく心が壊れそうな結依は、倫健に布マスクをプレゼントしようと思いながら眠りについた。


「いまGoToトラベルキャンペーンなのかなぁ。コロナが収束してから、国内観光需要喚起でGoToキャンペーンをするとして、予算を約1兆7000億円計上して、7月22日から旅行業が疲弊しているという理由からGoToトラベルを始めたね。そして、大手旅行業者や豪華な宿泊施設が恩恵を受けている。また、これらを利用できる人たちと利用できない人たちとの間に、不平等な格差が垣間見られる。しかし、ここはコロナ禍で、消費に協力してくれる人の善意を歓迎しよう。

 でも、台風避難にGoToトラベルを役立てた避難者にはグットタイミングだったのかなぁ」

と、フリーター君は言った。


「GoToトラブルと揶揄され、コロナの陽性者が日増しに、増加している。GoToやるなら、PCR検査を拡充し、陽性者を早期に見付けて宿泊療養や医療機関で治療し、陽性者の周りに知らせて追跡することが、経済を動かす早道じゃないの。九州大学の名誉教授も、PCR検査を増やすことで、人との接触を増やすことが出来ると言っていた。

 PCR検査を保険適用にすると聞いた時は、やっと政府もやる気になったかと思ったが、個人負担も国が負担することになり、無料というより選別をするということには変わりはなかった。

 これでは、PCR検査が進まないと訴えている東京大学の名誉教授は民間と区と力を合わせ、無料と有料を独自に始めた。PCR検査は、拡大すれば自己負担1500円ぐらいで出来るとも言っていた。

 民間では、経済を動かすために、利益度外視してPCR検査をするという奇特な人が現れた。唾液を使ってやるもので、2000円で行うと言っているね」

と、中小企業の経営者が言った。


「宿主としての人間は、コロナの執拗な攻撃の中、欲求との戦いで勝利できるのか。手強い新型コロナウイルスは幾度も変異し、収束を阻んできているからね」

と、オタク君が言った。


「世界はコロナ禍でも、観光業で成り立っている国々が、動いている。しかし、どこもそのたびにコロナ感染者が増えている。やはり、インバウンドではなく、国内観光が大事になる。日本も感染者の増加で医療がひっ迫してきている。日本の観光業の約80%が国内で、約20兆円あったので、これから先も長く続くコロナ禍での観光を考える必要があるね。他県ではなく同県内での観光が、GoToキャンペーン前から地域でのアイディアで行われていた。自国の労働者の賃金を下げ、サプライチェーン(製品供給網)で豊かになった海外からのインバウンドを期待するなど、悪循環を繰り返しているのであって、自殺行為に過ぎないと思い始めたよ」

と、大企業のCEOが言った。


「今、サプライチェーンのあり方が、世界中で問い直されている。コロナ禍で、医療品が届かないことに、愕然とした。また、住宅設備が入荷せずに建設中の家の工事がストップしてしまったこともあった。あらゆる部品が海外からの安価なものに、シフトしているためだった。

 産業の空洞化が叫ばれたが、これを政府は放置した。そのことは、国内の労働者の労働機会を奪い、国内総生産の約50%を占める消費を落ち込ませた。また、海外から安い労働力を研修という名で雇い、国内の賃金を下げている。

 これらサプライチェーンを有効に使って巨大化した国に、服従した国々が自国の意思を奪われた。国連は、どんな小さい国も、1国1票がある。援助を受けている国は同調せざるを得なくなっている。また、WHO(世界保健機関)も新型コロナウイルスの対応が疑問視されている」

と、感染症専門医が言った。


「経済は先進国がリードしているかにみえていたが、サプライチェーンによる海外への丸投げで、自国の産業の衰退に、今気付かされている。こんな悪循環を断ち切り、内需拡大へ舵を切らなければ、覇権主義を助ける事になる。これでは、日本を脅かす強国に勝てない」

と、経営コンサルタントは言った。


「サプライチェーンで成功した中国は、国際観光支出が一番多い。これは、何を意味しているか。日本も国際収支が多い時、円高や内需拡大を海外から突き付けられた。

自由主義国の経済至上主義が、グローバリゼーションで単純作業を海外へ低価格で押し付け、喜んでいた先進国は、国内の生産が減少し、移民を追い出す算段をしている。サプライチェーンで得た外貨は、今や軍拡へ使われ、先進国が対策として保護主義やブロック経済へと舵を切りかねない現状になっている」

と、自戒を込めて大企業のエリート君が言った。


「共産主義国が経済至上主義を取り入れると、強大な一国の大企業になれるということ。それが、グローバリゼーションの自由主義国の顛末とはね。人口爆発は、単純作業や危険な仕事を、低賃金で働かせる温床なっている」

と、中小企業の正社員君が言った。


「マスク、手洗い、うがい、ソーシャルディスタンス、3つの密を避ける。リモートワーク、リモート飲み会、デリバリーなど出来ることはしている」

と、ユーチューバー君が言った。


 結依は目覚めた時、こんな事を心配していたのだと思い、コロナ禍の自分を見つめ直す必要性を感じていた。

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