第3話 免疫

 ワクチンは、安全性を度外視して急ぐより、まずは免疫を強くしたらいいのかもしれない。日本人は、当初弱い新型コロナウイルスが日本に入って来て、いろいろな予防接種を受けている事やコロナに似た風邪ウイルスに一度罹った事で、交差免疫が反応してコロナを退治したのかもしれない。抗体検査をすると、陰性者でも最初にIgGが上昇する事がある。免疫は、訓練とか記憶とかで鍛えられて、訓練免疫とか記憶免疫とかに変身しているのかもしれない。



 午睡は、倫健のコロナ禍の習慣になった。午後の仕事の集中力アップと夜の寝つきがよくなっているようだった。倫健は、いつもではないが、夢を見るときがある。

 まずはコーヒーを一杯飲んで、アイマスクを付けて寝る。15分から30分ほどの短い仮眠が良好だ。そんな目覚めをコーヒーは助けてくれる。倫健は万が一のことを考えて、目覚まし時計を35分後にかけている。


「あれあれ、この間みたいな、ゲシュタルト崩壊が起こっている」

 

          免疫

            

           疫 

                                                                                            

    疒                               

              疒                    

几      又                 疒        

           几     又                 

    殳                  几     又

              殳

                          殳


やまいだれ   疒     まただ、へんな形


   るまた    殳     いや、こんな形だったっけ


「新型コロナウイルスにさらされ、たくさんの自然免疫(病原体を食べる)さんと多くのキラーT細胞(感染した細胞を攻撃する)さんで、退治したよ。だから、感染してないので、コロナの抗体は出来ていないよ」

と、自然免疫が言った。


「自然免疫さんたち、頑張ってくれ。強力な治療薬も安心できるワクチンもない今、頼れるのは君たちだ。幼児や子供は感染しにくいとか、若者は感染しても無症状か軽症と言われているが、高齢者は基礎疾患がある人が重症化しやすいと言われている。そして、世界中の施設でクラスターが出て、高齢者の死亡割合が高くなっているね。

 罹患して、回復しても後遺症が残る事もあるでしょう。できたら、コロナに感染したくないよ」

と、ヒトが言った。


「ヒトさんは、予防接種をたくさん受けたでしょう。4種混合ワクチン⦅ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)⦆か2種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)。ほかにも、BCG(結核)や麻疹ワクチン、日本脳炎ワクチンも受けたよね。

 いろいろなワクチン接種で抗体を持ち、未知のウイルスに対する抵抗性が高まり記憶に残り、特定の抗体ではない訓練とか記憶とかという獲得免疫を持ったね」

と、T細胞が言った。


「罹患して抗体が出来るより、われわら免疫がコロナを退治した方がいいよ。抗体は、善玉抗体や役なし抗体、悪玉抗体があるしね。それに、抗体は長持ちしないみたいだし、新型コロナウイルスは遺伝子の変異が多いと聞くしね」

と、キラーT細胞が言った。

 

「新型コロナウイルスは、ヒトDNAの2本の鎖RNA遺伝子と違い、1本の鎖RNA遺伝子で変異しやすい。ウイルスは、都合のいい変異だけを量産し、宿主であるヒトを媒介として感染を繰り返す悪魔のようなものだ」

と、B細胞が言った。


「コロナは、発症2日前から感染力が高い。といっても、無症状者は30~50%と言われているのに、PCR検査が少なければ、市中で感染が広がる。

 陽性率は世界的に2%が基準で考えられている。ニューヨークは2%を上回るとPCR検査が少ないと考えられている。日本政府は、PCR検査を増やしているというが、6%前後では、間違いなくPCR検査が少ない事を示している」

と、白血球の免疫細胞が言った。


「クルーズ船は、乗員乗客3711人で、感染者数が712人、死亡者数が13人だった。つまり密閉空間では、陽性率が約19.2%で、死亡率が約1.8%であったということなのだろう。世界的な陽性率2%から見ると、10倍になるということで、3つの密(密閉・密集・密接)がいかに危険かということね。下船後に、感染が判明している乗客もいるらしいね」

と、ヘルパーT細胞が言った。


 倫健は、目覚まし時計が鳴る前に目覚めた。コーヒーの量が完璧だったのか、気分よく起きられた。それにしても、コロナ一色の夢を見ていた。この先、仕方がないのかなぁと思えた。でも、いやな夢ではなかったようだ。


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