第44話 誰が為に振り翳す刃
「……憑かれてる、ってどういう意味だよテスタ婆」
「あの剣を振るう亡霊こそが倒すべき相手ってことさ」
勢い良く突っ込んできた剣を抜き払った双剣で弾いた後、サンダルフォンは表情を険しくする。
「……中々の無茶振りだな。姿が見えない剣士を斬り伏せろ、だなんて」
眼前の敵を斬るという明確な意図が存在する剣の攻撃にどうにか対応しつつ、サンダルフォンは反撃を試みる。
「外した、いや躱されたか……?」
何度斬りかかっても手応えが無い理由を冷静に分析した後、サンダルフォンは一つの確信に至る。
「俺の動きが全部読まれてる、だから何度攻撃しても当たらないんだ」
「それは……マズいんじゃないかい?」
「いや、付け入る隙はある……というよりわざと用意してるんだろうな」
若干苛立った顔をしつつ、サンダルフォンは双剣を構え直す。
「何様のつもりだ」
そう呟くのと同時にサンダルフォンは剣との間合いを一気に詰め、数度打ち合った後に双剣の一方を前に突き出す。
「……まぁ、良い勉強にはなったけどな」
地面に落ちた剣を見下ろしながらサンダルフォンは溜め息を吐き、双剣を鞘に納める。
「上をご覧、サン坊。何か落ちてくるよ」
「あれは……花弁、か?」
鈍色の空から落ちてきた一枚の花弁を掴み取った瞬間、サンダルフォンの脳裏に今いる場所と酷似した光景が過る。
「ああクソ!倒しても倒しても数が減らねぇ!」
「親玉を仕留めろ!そうすりゃ雑魚どもの増殖は止まる!」
「魔法を使える奴はこっちに来てくれ!ここら一帯を浄化する!」
「ええい、忌々しい狩人どもめ!」
「数ではこっちの方が勝っている!臆せず進め!」
「パンフィリカ様に勝利を捧げよ!人間どもに絶望を与えよ!」
相対する二つの陣営から多種多様な叫び声が響く中、一振りの剣が地面に突き立てられる。
「ここまで……か……」
満身創痍の剣士は仰向けに倒れ、鈍色の空を見上げる。
「もう少し……戦いたかった、な……」
「……そういうことかよ」
今一度剣を見下ろし、サンダルフォンは肩を竦める。
「過去視の魔法で何を見たんだい?」
「ここであった戦いの光景だ」
平たい岩の上に腰掛け、サンダルフォンはぽつりと呟く。
「腕利きって本当に凄いんだな……」
一呼吸置いた後、サンダルフォンは懐からブローチを取り出す。
「とりあえず魔女さんに報告するか」
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