第4話 弔いの剣と冒涜の花
そして戦いという名の供養は始まった。
剣を携えた人形と数度打ち合った後に斬り伏せ、斧を構えた人形の一撃を躱して胸を穿つ。
弓矢を構えた人形の懐に入って一太刀を浴びせ、槍を構えた人形を両断する。
それを暫く繰り返した後、薄明かりに包まれた空間に静寂が訪れる。
「終わった、のか?」
「……はい、全員倒しましたよ」
「そう、か」
双剣を鞘に納め、アンヘルはその場に座り込む。
青い薔薇のコサージュがアンヘルの手元に落ちてきたのはその直後のことだった。
「……何だこれ」
「恐らく赤い薔薇の扉に施された封印を解く鍵の一つでしょう」
「これをあと四つ、集めなきゃいけないのか」
そう呟いた直後、アンヘルの脳裏に見知らぬ光景が過る。
「本当にこっちで良いのか……?」
「クソッ、これじゃ埒が明かないぞ!」
「や、やめろ!こっちに来るな!」
「ぎゃああああああ!」
「──ねぇ、どうして?」
人形に変えられた死体の山を見下ろしながら美しいドレスを纏った少女は退屈そうに呟く。
「どうして誰も、わたしのところまで辿り着けないの?」
「ベアトリシア様、こいつらは貴女様と討たんとしている狩人であって……」
「お客様をすぐに殺してしまう意地悪なフロリアンは黙ってて!」
主君──ベアトリシアのあんまりな言い草にフロリアンと呼ばれたはしょんぼりする。
「ねぇカーチャ、どうしたら良いと思う?」
「そうね……ベアはお客様にゲームをやってほしいのよね?」
「ええ、そうよ」
「だったらまずはルールを整備しましょう。何をどうすれば良いのかが分からないとお客様は困ってしまうわ」
「……そうね!分からないのはとっても嫌なことだわ!」
ベアトリシアが満面の笑みを浮かべたのにつられてカーチャと呼ばれた少女も微笑む。
「ねぇ教えてカーチャ。これは囚われたお姫様を助け出すために困難を乗り越えていくゲームだってお客様に分かってもらうためには何をどうしたら良いの?」
「そうね──」
「これがお姫様を助け出すゲーム、だって?」
怒りに震える拳を強く握ったまま、アンヘルはぼそりと呟く。
「ふざけるのも大概にしろ……」
「……一度イフティミアの工房に戻りましょう。アンヘル、ペンデュラムを」
言われるままアンヘルは懐から水晶のペンデュラムを取り出し、込められた魔法を発動するキーワードを口にする。
「"導け"」
その瞬間、アンヘルの足元に現れた魔法陣が転送の魔法を発動させた。
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