第31話 ルティア パート14

 一方シェダルはルティアを抱きかかえピンク色の可愛い扉の前に立つ。



 「アルカナ様、ルティアちゃんを無事に保護することができました」



 ピンクの可愛い扉が開き、金髪のツインテールの可愛らしい女の子が姿を見せた。女の子の肌は粉雪のように白く、大きな金色の瞳は涙で覆われていた。



 「ルティアちゃん、ごめんなさい。私のせいで酷い目にあったよね。私が治癒しなければ・・・」

 「アルカナ様、あなたは何も悪いことはしていません。治癒しなければルティアちゃんは死んでいました。死んでしまったら救うことはできなかったのです。ルティアちゃんは地獄のような苦しい日々を過ごしたかもしれませんが、今日からは穏やかな日々を暮らせるように、私たちが協力いたしましょう」



 涙を流して自分を責めるアルカナをシェダルは優しい眼差しで慰める。



 「うん。私がルティアちゃんを幸せにするの」



 アルカナはルティアに近づき両手をかざす。アルカナの手からピンク色のハート形の光が現れてルティアの体を覆いつくす。すると、ルティアの皮膚が生き物のように動き出し、身体中にある無数の傷を修復する。5分も経過しないうちにルティアは、エメラルドグリーンの美しい肌に戻った



 「ルティアちゃん、お願い目を覚まして」



 ルティアの治療は終了したが、まだ眠ったように瞳を閉じている。



 「アルカナ様、支配の首輪を外した方がよいと思います。支配による束縛がルティアちゃんの生きる気力を失わせているのです」



 支配の首輪は契約を交わした時に首に装着されるが、時間が経過すると皮膚と同化して肉眼では判断できなくなる。支配の首輪を外すには、契約者と契約破棄の契約を交わさなければならない。



 「シェダルちゃん、状態異常無効化の魔法を使えば良いの?」

 「そうです。支配の契約は魔法契約になるので状態異常に該当します。普通の状態異常無効化の魔法では支配の首輪を解除するのは不可能ですが、聖女様が使う魔法は特別ですので、どのような状態異常も無効化する力があるのです」

 


 再びアルカナはルティアに手をかざす。すると次は、淡いブルーのハート形の光が現れてルティアの体を包み込む。しばらくすると首の辺りに禍々しい黒い首輪が浮き上がってきた。



 「アルカナ様、ロード国王陛下の欲望が協力な為、支配の首輪がルティアちゃんから離れようとしません。魔法のステッキで浄化しましょう」



 支配の首輪の強度、拘束力はレベルが上がるに連れて強まるが、それ以外に欲深い人間の醜い心によっても強化される。



 「わかったの」




 アルカナは机の引き出しにしまっていた先端がピンクのハート型の可愛らしい白いステッキを取り出した。



 「ルンルン🎶ランラン🎶ルンルンルーン🎶ルンルン🎶ランラン🎶ルンルンルーン🎶」



 アルカナが不思議なメロディーを口ずさむとステッキのハートの部分がピンク色に光る。そして、ステッキを振り回してハートの形を作ると、空中に1mほどのハートの造形物ができあがった。



 「悪いの悪いの飛んでいけぇ~」



 アルカナが呪文を唱えると、ハートの造形物はルティアの体に浸透しルティアの体がピンク色に光り出す。すると支配の首輪は崩れる落ちるようにピンク色の灰に変わった。


 

  「この灰は私が預かっておきます」



 シェダルは小さな小瓶にピンク色の灰を詰め込んだ。



 「これでルティアちゃんは完全に自由になりました。あとは生きる気力を取り戻すのを待ちましょう」



 アルカナはベットに横たわるルティアの手を握りしめ目を覚ますのを待ち続ける。

 どれくらいの時間が経過したのだろうか、ルティアの手がほんのわずかだがピクリと動いた。



 「ルティアちゃん」



 アルカナはルティアの手を強く握り返した。



 「ここは・・・どこなの?」



 振り絞るようにして出された言葉はあまりにもひ弱で今にもかき消されそうだ。



 「ここは私の部屋よ。やっと助け出すことができたの」



 アルカナの歓喜の言葉を耳にしたルティアは優しい笑みを浮かべる。



 「約束を守ってくれたのですね。ありがとう」



 自分の状況を理解したルティアは、天国に辿り着いたかのような安心感を得て、顔色がみるみる良くなっていく。



 「シェダルちゃん、アルカナちゃんと一緒にいたライオスくんはどうなったの?」

 「アルカナ様、ライオスくんのことは諦めてください。ライオスくんはロード国王陛下の手駒として管理されています。ルティアちゃんのように生死が問題視されない存在ではないのです」


 「でも、ライオスくんはルティアちゃんの大事な友達だよ。一緒に助けてあげたいよ~。シャダルちゃんの予知眼でどうにかならないの?」

 「残念ながら二人が助かる未来は見えません。それは最初にお話ししたはずです。ライオスくんのことは諦めてください」


 「でも・・・」



 アルカナは3歳の頃からデンメルンク城の地下にある治療部屋と呼ばれる冷たい石の壁に囲まれた大きな部屋で治癒行為を行っていた。名目上はミレニアム学院で治癒の勉強をしていることになっていたが、3歳から10歳になるまでは、シェダルと一緒に治癒部屋で毎日のように治癒行為に専念していた。

 なぜ、ロード国王が国民に嘘の報告をしたのか、それにはきちんとした理由があった。


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終焉の姫と聖女の姫~双子の王女の数奇な運命の物語~ 【リメイク版】 にんじん太郎 @ninjinmazui

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