第22話 ルティア パート5
「この肉塊には同情するが、いまから二度目の地獄を味わうことになるだろう・・・」
門兵はぼそりと呟きスラム街の入り口近くにある管理室に向かった。
「ランデル、『亜人館』から生贄が運ばれて来たぞ。すぐにゴミ広場まで運んできてくれ」
「わかりました。でも、今日は学生が奉仕活動に来ていますが問題ないのでしょうか?」
「たしか・・・ハイドランジア国の王子と王女が奉仕活動に来ていたな。自国の出稼ぎ労働者の成れの果てを見て、定期的に奉仕活動をしている偽善者たちに、自国民の本性を見せるには良い機会になるだろう」
「クリープさん、それは良きアイディアだと思います。ケルトをデンメルンク王国の国王に推す者も多くいますが、私はモナーク殿下こそがデンメルンク王国の国王に
相応しいと思っています。ケルトのガキに現実を思い知らせてあげます」
ランデルは手押し車に袋をのせてスラムの中心にあるゴミ広場に向かった。
スラム街は再起不能となった労働者を捨てる場所ではない。本当に必要がなくなった者を養うほどロード国王はおひとよしではない。スラム街にはきちんとした存続する理由がある。その一つが生ゴミの再利用である。生ごみは焼却すれば済む事だが、いちいち燃やすのも面倒である。しかし、生ごみをスラム街に運べばお腹をすかしたスラムの住人が綺麗に食べてくれるのである。精神が崩壊したスラムの住人は自分の糞尿、人間の死体でさえ口にする。スラム街の住人は王都のゴミを食べてくれる益虫のような存在であった。
色街で使い道が無くなった人間や亜人は、スラム街で弄ばれた後に食事となってその生涯を終えることになる。
ランデルはゴミ広場に到着すると袋から肉塊を引きずり出す。
「お前達にご褒美を持ってきたぞ!」
ランデルが大声で叫ぶ。すると、周りにあるボロボロの崩れた家々から、たくさんの不気味な目がランデルの方を見る。
「こいつは亜人の女だ。お前達の好きにすればよい」
ランデルはそう叫ぶと急いでその場から去っていく。すると先程まで誰もいなかったゴミ広場には、ボロボロの異臭を放つ黒ずんだ服を来た男たちが続々と集まり出してきた。
「女だ!」
「女女女女!」
「俺の女だぁ~」
「あぁ~~~~」
集まってきた20名ほどの男たちが肉塊を見て興奮をあらわにする。
「俺のだ~」
ゴミ広場に横たわる肉塊は、常人は背を向けたくなるむごたらしい状態だ。しかし、スラムの住人はその肉塊を見て絶頂の笑みを浮かべて股間を膨らましている。1人の男性がズボンを脱いで半裸になると肉塊の両足を開いて、膨らんだイチモツを股間に挿入する。
「俺にもやらせろ」
「俺も」
「俺も」
次々と男たちは半裸になり肉塊の顔にイチモツをこすりつける者、両手で肉塊の胸をわしづかみにする者、肉塊の手を自分のイチモツにこすりつける者、三者三葉に肉塊をアダルトグッズのようにもてあそぶ。
肉塊にありつけなかった者は、おもむろにイチモツを出して1人でマスターベーションをするなどゴミ広場は一瞬で地獄絵図となった。
そして、数分後・・・
「お前らそこまでだ!その女の子は俺が買い取る。これ以上その女の子を蹂躙する事は俺が許さない。俺に殺されたくなければすぐにこの場から立ち去れ」
肉塊の群がるスラムの住人に怒号をあげたのは、燃えるような赤い髪のマッシュウルフの髪型に、吸い込まれそうな透き通る青い瞳、誰もが振り返る端正な顔立ち、少し細身だがバランス良く筋肉がついた優美な肉体、身長は180cmくらいあり、いかにも高貴な人物だと思える凛としたたたずまい、この男性を見たスラム街の住人は、すぐに逆らってはいけない人物だと本能的に悟り、怯えて異常行為をやめる。
「皆さん、いつもの施しを配給場所に持ってきました。皆さんで仲良く分け合って食べて下さいね」
ルビーのように光り輝く赤いセミロングの髪型に、心が癒されるような新緑のような緑の瞳、誰もが笑顔になってしまうような明るく可愛い顔立ちに細身の体に少し小さめだが色気を誘う小ぶりの胸。この女性はスラム街の男たちとは面識があるみたいで、優しくスラム街の住人に声をかける。
「ケルトお兄様、あまり皆さんを威嚇するような態度はやめてください」
「何を言っているのだ。早くあいつらを追い払わないとあの子が殺されてしまうのだぞ」
「わかっています。でも焦りは禁物です。スラム街にもきちんとしたルールがあるのです。ここのことは私のがよく知っていますので、私に任せてくださいと言っておいたはずです」
「すまん。ついあの子の惨たらしい姿を見たら焦ってしまったのだ」
ゴミ広場に姿を見せたのはハイドランジア国王の第一王子のケルトとケルトの妹であり第一王女のヒーリンであった。
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