第21話 ルティア パート4
モナークは快楽の絶頂を得て清々しい顔をして奈落の間を後にした。モナークの去った部屋の中には、歪な生き物が全身から血を流して横たわっていた。体には無数の咬み傷、乳首は噛みちぎられていて原型をとどめていない。股間には何か遺物が突き刺さっていておびただしい量の血が流れている。これでまだ死んでいないのが不思議であった。
「これはひどいな。ウッ・・・」
『亜人館』の店員の若い男性は目を背けたくなる光景を見て思わず吐き出してしまった。
「おい、大丈夫か」
別の店員の男性が声をかける。
「・・・」
「お前はモナーク殿下の事後処理をするのは初めてだったよな」
「・・・」
「裏メニューがあった時でも、ここまでコブリンを痛めつけるヤツはいなかった。アイツは究極のサディストだ。あの歪な性癖はロード国王陛下から受け継いだものだろう」
「・・・」
「こんな凄惨な光景を見たらそうなるよな。お前は休憩室で休んでこい。俺が後始末しておいてやる」
男性は逃げ去るように奈落の間から姿を消した。
「まだ生きているようだな。店主の指示でコイツはスラムに売り飛ばすことになっているが、こんな化け物でも値がつくのが信じられないぜ」
男性は大きな皮の袋に歪な生き物を入れて袋を肩に担いで奈落の間から出て店主の元へ向かった。
「ガイゼル様、コブリンは酷い有様でした。こんな状態でも本当に売れるのでしょうか?」
「問題はない。それに売ると言っても儲けるために売るのではなくスラムへの奉仕活動のようなものだ」
「そうですか・・・でも、あの美しかったコブリンの顔がミンチ肉のようにグチャグチャにつぶされ、体もハイエナに襲われたかのようなズタズタに噛み千切られています。特に〇〇〇は〇〇で突き刺され直視できるものではありません。前回よりも酷い状態です。このような歪な姿にされた生き物を誰が好き好んで相手にするのでしょうか?」
「お前はスラム街のことを何も知らないのだな。性欲に飢えたアイツらには、その化け物でも極上の一品に見えるのだよ。しかし、きちんと洗浄してから持っていけ。それが礼儀というものだ」
「わかりました」
店員は歪な生き物の体を綺麗に洗い血を落としてから袋に入れ直し、荷馬車に乗って王都の外れにあるスラム街へ向かった。
煌びやかな立派な家が立ち並ぶ王都の一角に、別の世界へワープしたような荒れ果てた家が立ち並ぶ場所がある。そこは、デンメルンク王国で多額の給料が貰える仕事があると騙された他国の出稼ぎ労働者が、奴隷のようなひどい扱いを受けた後、精神がおかしくなり奴隷として働けなくなった者を収容するスラム街であった。
スラム街は大きな壁で周りを囲まれていて自由に行き来することはできない。中へ入るには、正面にある大きな門を通過しないといけない。
「『亜人館』からのお届け物だ」
男性が門兵に声をかける。
「わかった。すぐに門を開けるから中へ入れ」
大きな門は鈍い音をたてながらゆっくりと開き、荷馬車はスラム街の入って行く。
「久しぶりの生け贄か。住人たちもさぞかし喜ぶだろう」
「何を運んできたのかわかるのか?」
「『亜人館』から運ばれてくる物は一つしかないだろ」
「そうか。しかし、本当にこんな歪な肉塊と性行為なんてするのか?」
「アハハハハ。まともな神経の持ち主ならありえないだろうよ。俺は初めてあの肉塊を見ただけで吐いてしまった。でもアイツらは違う。あの肉塊が女だとわかると、目が輝きパンツを脱いで性行為をしようとする。他の奴らも性器を剥き出しにして肉塊に擦り付け自慰行為を楽しんでいた」
「信じられない・・・」
「信じられないのなら見て行くか?」
「・・・いや、やめておこう」
「それが良いだろう。あんな光景は好き好んで見るものではない。では、荷物を受け取らせてもらおう」
男性は荷馬車から大きな袋を引きずり落とす。
「念の為のにブツの確認させてもらうが構わないか?」
「好きにしろ」
門兵はナイフを取り出して袋を引き裂いた。
「うぉぉぉぉ〜」
袋の中身を見た門兵はすぐに吐き出した。
「なんだこれは。これが本当にコブリンなのか?肌はドス黒く変色し、顔は潰れて原形がわからなくなっている。それに・・・」
門兵はそれ以上語るのを辞めた。それはあまりにも酷たらしい状態だったので、言葉にすることさえできなかったのである。
「このような状態だが、本当に買取してくれるのか?」
「問題ない。こんな肉塊でもスラムの住人にとってはご褒美になる。しかし、ここまで酷い状態は初めて見た・・・」
門兵は言葉に詰まる。
「さぁ、代金を受けとってくれ」
男性はお金を受け取りスラム街から出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます