第19話 ルティア パート2

「モナーク!今回は俺と一緒に『昇天姫』へ行こうぜ。貴族専用の優良店だからハズレなしだし、王子のお前なら無料て利用できるだろ」



 色街は王都グロワールの中心部にある飲食街の一角に煌びやかに存在している。その中で一際豪華なお城のような建物が『昇天姫』であり、ここは貴族でないと入店することはできない。店の扉の前には屈強な男が2人立っていて身分証を確認している。色街を裏で牛耳ってるのはロード国王なので、『昇天姫』の店員がモナークからお金を請求することはない。

 そして、『昇天姫』の周りにはいくつもの色店はあるが、『昇天姫』に比べると見窄らしく、怪しげな男達が客引きをしている。


 

 「俺は『亜人館』へ行く」



 モナークはボソリとつぶやいた。



 「また『亜人館』へ行くのか?確かにコブリンのビジュアル・肉体はそそるものがあるが、店で働く前に精神を破壊されて悲鳴や奇声しか発しない人形だぜ。俺は恋人と過ごすような甘い時間を楽しみたいから、『亜人館』には興味はないな」


 『亜人館』とは亜人種をを扱っている色店である。亜人種といってもコブリンしかいない。

 コブリンに支配の首輪をつけさせるには、並大抵の拷問では屈することはない。誘拐されたコブリンの大半は支配の首輪をつけさせる拷問で命を落とすことになる。

 支配の首輪をつけることに成功したコブリンは、生命力が強く死ぬよりも先に精神が壊れてしまい無意識で支配を受け入れたのである。

 


 「俺は1人で行ってくる」


 モナークは1人で『亜人館』へ向かった。『亜人館』は色街で一際不気味な雰囲気を漂わせる歪な建物である。『昇天姫』の煌びやかな雰囲気とは真逆で、レンガで作られた建物には監獄のように大きな反り立つ塀があり建物を外から見ることはできない。しかも、塀の中からは地獄の底から聞こえてきそうな嗚咽のような叫び声が聞こえてくる。この声を聞いているだけでも身の毛のよだつ気分になってしまうのだが、モナークは逆に愉悦の笑みを浮かべているのであった。


 モナークは『亜人館』の入口の前まで来るとそのまま通り過ぎてしまった。そして、『亜人館』から少し離れた小さな小屋に入って行った。



 「モナーク殿下・・・」



 小屋の中には初老の白髪の男性が椅子に腰掛けていたが、モナークが小屋に入ってきた途端に顔が歪み明らかに機嫌が悪くなる。



 「コブリンはいるか?」

 「モナーク殿下!何度言えばおわかり頂けるのでしょうか?あの事件以来コブリン狩りは中止されています。なので裏メニューは提供できなくなっています」


 「まだ、コブリン狩りの中止前に捕らえたコブリンが数名残っているはずだ。この前のようにそいつらを俺に提供すれば良いことだ」

 「モナーク殿下、支配の首輪を付けることに成功した大事なコブリンをこれ以上失うわけにいかないのです。それほどまでにコブリンとお楽しみをしたいのであれば、ご自身でコブリンを捕獲してください」


 「いずれそうするつもりだ。そうだ、お前に良いことを教えてやる。それを聞けばお前も納得するだろう」

 「わかりました。私が納得のいく内容でしたら、最高級のコブリンを用意致しましょう」


 「それは楽しみだな。ではお前に良いことを教えてやる。これは内密の話だが、もう時期コブリン狩りは再開される事になる。その理由はまだ言えないがこれは確実な情報だ」

 「それは本当なのでしょうか」


 「本当だ。俺を信じられないのか」

 「そんなことはありません。モナーク殿下のことを信じましょう。コブリン狩りが再開されるとならば、喜んで裏メニューを提供させていただきます。では、奈落の間へお入り下さい」


 その言葉を聞いた瞬間にモナークはよだれを垂らしながら股間を大きく膨らましていた。モナークはニタニタと気持ち悪い顔をして奈落の間に向かう。



 「あの鬼畜変態王子のせいで、何人のコブリンをダメにしたことか。もうアイツにコブリンを提供しないと決めていたが、コブリン狩りが再開されるならば問題はないだろう。今回も莫大な請求書を陛下に送りつけてやるか。ガハハハハハ」


 モナークの姿が見えなくなると、初老の男性は莫大なお金が手に入ることに興奮を抑えきれずに、小屋の外にも響きわたるような大きな声で高笑いをしていた。


 小屋からは地下に通ずる階段があり、階段を下り地下通路を進むと『亜人館』の地下部屋の1つ奈落の間に繋がっていた。

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