コブリンの少女ルティア

第18話 ルティア パート1

 デンメルンク王国第一王子モナークは『覇王』の称号を授かって生まれた。国王の第一子が『覇王』の称号を授かるのは珍しいことでないが、ロード国王は無事に第一子が『覇王』の称号を授かって生まれたことに安堵した。


 モナークは王になるべくロード国王から厳しい指導を受けて順調に才能を開花していきグロワール王立学園を次席で卒業した・・・そう次席であった。


 モナークはロード国王と瓜二つで体型にも恵まれて190cmと高身長で筋骨隆々の体、強面の鋭い眼光を持ち、肩まで伸びる荒々しい黒髪で王というよりも盗賊のボスのような風貌である。



 「なぜ、あいつに勝てないのだ!!!」



 モナークは目の前にある大理石の大きなテーブルを素手で半分に叩き割る。



 「モナーク殿下、落ち着いてください。相手があのケルト王子なら仕方がないことです」



 モナークの専属メイドの1人『五芒星』のカフが透き通る優しい声で言った。カフは澄み渡る空のような青い長い髪と青い瞳を持つ小柄の可愛らしい女性だ。童顔の可愛い顔とは真逆にスタイルはグラビアモデルのような体型をしており、特に胸の大きさんはデンメルンク王国最高峰と言っても過言ではない。



 「親父の情けで国を与えてやったケーニヒのバカ息子に俺が負けることが仕方がないことなのか!メイドごときが俺に偉そうなこと言うな」


 モナークは怒りを露わにする。



 「失礼ですがモナーク殿下、あまりケーニヒ王とケルト王子の悪口を大声で叫ぶのはやめておいた方が良いと思います。未だにデンメルンク王国の王にはケーニヒ王が相応しいとの声が絶えません。しかも次期国王にはケルト王子に就任してほしいとの声もあります。ケルト王子に卒業前の模擬戦に敗れ、素行もあまり良くないモナーク殿下の評判は、今は地に落ちたも同然です。まだ、次期国王を目指すのならば凛とした立ち振る舞いと雄大なる心の広さを国民に見せつける方が得策だと思います」



 グロワール王立学園では卒業式の前日に成績上位者の模擬戦が行われる。これは誰がグロワール王立学院で優秀なのかを国民にわからせるため重要な大会である。今年は『覇王』の『称号』を持つモナーク第1王子と、ハイドランジア国の第1王子のケルトが模擬戦に出場していたので、大会前から非常に盛り上がりをみせていた。もちろん結果はケルトが圧倒的な強さで勝ち上がり、決勝ではモナークに完勝した。



 「わかっている。だからここで暴れているのだろ!お前も俺の専属メイドなら優しい言葉のひとつもかけることができないのか!」


 モナークは自分の置かれている立場を理解していた。王になるためには王に相応しい力がいる。不正をして王になれるほど『レア称号』の導きは甘くはない。


 「私はモナーク殿下に王として相応しい人物に成長してほしいのです。そのためならば、どのような厳しい言葉でもぶつけるつもりです。モナーク様の取り巻きはあなたを堕落させるようなことしか致しません。いつまでもあのような悪友と一緒にいるのは好ましくないと思います」

 「・・・」


 

 モナークはカフに言い返す言葉が見つからず黙り込んでしまった。



 「失礼します」


 モナークの部屋に別のメイドが入ってきた。


 「モナーク殿下、グリモワール様が迎えに来ています」

 「わかった。すぐに向かう」



 意気消沈していたモナークだか、メイドの言葉を聞いて目をキラキラと輝かせ嬉しそうに部屋を出て行った。


 「カフ様は一緒に行かなくてよろしいのでしょうか?」

 「必要ないでしょう。王都で殿下を襲う者はいませんし私が居れば雰囲気も悪くなるはずです」


 「色街に行かれたのですね」

 「そういうことよ」



 


 「モナーク!約束の時間になっても来ないから迎えに来たぞ」

 「悪い。悪い。決勝で負けたからオヤジに長々と説教をされて、さっき解放されたところなんだよ」



 モナークは模擬戦の決勝戦でケルトに敗れたことで、すぐに城に連れ戻されてロード国王にこっ酷く説教を受けていた。その後自分の部屋に戻って荒れていたのであった。


 「相手が悪すぎるぜ。ケルトは『英雄』の『レア称号』持ちだろ。いくらお前が『覇王』の『レア称号』を授かっていても分が悪すぎる。同世代に『英雄』がいるなんてお前も運が悪いな」



 『英雄』それはランクSSの『レア称号』であり、『覇王』と同じく『王』になることができる称号である。『覇王』よりも希少な『レア称号』であり、レベルが同じなら『英雄』の方が優れていると認識されている。

 モナークは『覇王』のレベル1だがケルトは『英雄』のレベル2である。レベルだけ見てもモナークがケルトに勝てないのは当然であった。



 「あいつさえいなければ俺が主席で卒業できたはずだ。あいつさえいなければ・・・」

 「モナークそんなことを気にしてても仕方ないぜ。今日は色街に行って思いっきり楽しもうじゃないか!」


 「そうだな・・・久しぶりの色街だし俺の鬱憤を思いっきり吐き出すぜ!」



 色街とは風俗店が立ち並ぶ一角をさす言葉である。王都グロワールには誘拐された女性や亜人種などが性奴隷として色街で強制的に働かされている。彼女らには支配の首輪がつけられていて、抵抗すると激しい電流が流れるので抵抗することはできない。


 支配の首輪とは『レア称号』の『覇王』『英雄』『支配者』などが有するスキルの一つである。レベルに応じて支配できる相手や数が変わる。

 例えば『覇王』のレベル1で支配できるのは、ゴブリンなら未熟なコブリンだけである。なので、ボブゴブリン以上には通用しない。人間の場合は『称号』なしなら支配の対象になるが、『称号』ありは支配の対象にはならない。そして、支配するには支配(奴隷)契約がなされないといけない。これは文章でなく口頭でも問題はない。大抵は激しい拷問のうえ無理矢理支配契約がなされるのが普通である

 コブリンの時に支配契約したコブリンは契約を解除しない限り進化する事が出来ず一生コブリンのままである。

 

 王都の色街で働かされてる奴隷は、ほとんどがロード国王と支配契約を結び働いている。奴隷には一切報酬が支払われることはなく、全てロード国王の資産になるのであった。

 

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