第15話 ゴブリンの村 パート6

 さて、ここでなぜ幼い私がこれほどまでに、魔力操作などに詳しいのか疑問に思われるだろう。私がいろんなことに詳しいのにはきちんとした理由がある。


 あれは私が4歳の頃である。アザレアに抱かれながらスヤスヤとお昼寝をしていた時、バナナ畑でたくさんのバナナに囲まれながら、バナナを美味しそうに食べている夢を見ている時だった。



 「モグモグ、モグモグ」



 バナナは私の大好物の果物である。滅多に手に入らないので年に一回しか食べれる機会はない。バナナを食べたいと毎日思っていたので、私はバナナを食べる夢を見ていたのだろう。



 「美味しいのー。もっともっとバナナ食をべるぞぉ~」



 私は足元に咲いているバナナを手に取り二本目のバナナを頬張る。ここは夢の中なので、バナナがチューリップのように地面から生えている。



 「モグモグ、モグモグ」



 私は満面の笑みを浮かべて幸せな夢を見ていた。



 「まだまだ足りないわ」



 私はさらにバナナを手に取りバナナの皮をむく。



 「え~~~~~」



 なんとバナナは熟し過ぎて真っ黒になっていた。



 「なんてことなのよぉ〜でもバナナはまだまだたくさんあるのよ」



 私は再びバナナを手に取りバナナの皮をむく。



 「え~~~~~なぜなの。なぜ私のバナナが真っ黒になっているのよぉ~」



 どのバナナの皮をむいても、バナナが真っ黒で食べる事が出来ずに私は今にも泣きそうになっていた。



 「あなた!いつまでバナナに夢中になっているの!」

 「そうよ。いつになったら私達の存在に気付くのかしら」


 私をなじるような言葉が私の脳に響く。



 「え?どういうことなの」



 私はバナナから視線を外し辺りを見渡した。すると私の目の前には、同じくらいの年齢の2人の少女が黒い大きな瞳を光らせて、怒りに満ちた表情で私を見ていた。2人の少女の顔は全く同じだが、1人は腰まで伸びた黒髪で、もう1人は耳が隠れる程度のボーイッシュな黒髪であった。


 

 「あなた達は誰なの?」



 私は恐る恐る問いかける。



 「やっと私達の存在に気付いたわ」

 「そうね。ずっと側に居たのにね」

 「え!いつからの居たの?」


 「ずっとあなたの夢の中に居たわ」

 「そうよ。いつもいつもバナナに夢中で私達の存在に気づかなかっただけよ」

 「痛いですぅ~」

 

 2人は大きな声で脳内に話しかけるので頭が割れるように痛かった。でも2人の言葉でわかったことがある。ここは現実世界ではなく夢の中であることに。



 「な~んだ。私は夢を見ているだけなのね。それならあなた達は私が作り出した幻ね」

 「何を言ってるの。バナナは幻だけど私達は幻ではないわ」

 「そうよ」


 「バナナが本物であってほしかったですぅ~」



 私は思わずしょんぼりとする。



 「アンファ、本当にこの子で大丈夫なの」

 「『終焉姫』が選んだのだから問題はないはずよ」


 「でも、この子の頭の中はバナナしか入っていないわ」

 「まだ子供だから仕方がないのかもしれない。でも、もうそろそろ『終焉姫』としての役割を理解してもらう必要があるわ」


 「しかし、ずっと私達が側に居たのに気づかなった子よ。バナナを黒く変色させてやっと私達の声に耳を傾けたけど、本当に大丈夫なのかしら」

 「いまさら変更はできないわ。また1000年の時を待つのは退屈だからね。この子で我慢するしかないのよ」


 「はぁ~・・・わかったわ」


 もちろん2人の会話は私の脳内に流れている。詳しいことはよくわからないが、私のことを話していることだけは理解できた。



 「あの〜私のバナナを元に戻して欲しいです」



 私にとって1番大事なのはバナナである。黒く変色させることができるのなら、元に戻せることもできるはずである。



 「黙りなさい!あなたは『終焉姫』としての自覚はないのかしら」

 「特に・・・ありません」



 そもそも『終焉姫』とは何のことだか意味がわからない。



 「エンデ、この子はまだ『終焉姫』の『レア称号』を授かっていることをしらないのよ。きちんと説明をすることが先よ」

 「今まで何度も何度も耳元で説明していたはずよ。普通の子ならその言葉に耳を傾けるはずなのに・・・この子はバナナバナナと言葉を発するだけ」



 そう言えば、私が目を閉じて寝ようとしている時に、子守唄のような心地良い声で話しかける声が聞こえた気がしていた。しかし、あまりにも心地良い声だったので、すぐに寝てしまっていた。



 「エンデが怒るのもわかるけど、今日こそはきちんと説明しないと、『終焉姫』として成長に影響を及ぼす可能性があるわ」

 「わかったわ。そこのポンコツ、今から私が話すことをしっかりと聞くのよね」

 「は・・・い」


 断れる雰囲気ではなかったので渋々了承した。


 






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