ずっと君に言いたい事があったんだ…
リュウガ
第1話
いつからだろう…。
そんな事今となっては忘れてしまった。
小学校の高学年…、確か四年生の時だったか?
「何故彼女を好きになったの?」
そんな事もとっくに忘れてしまった……
いや、それは無いな。そうだ、思い出してきた、彼女はとても魅力的で、とてもカッコいい人だった。
俺は小学生の頃から、運動も勉強もそこそこ出来る奴だった。
別にずば抜けていた訳じゃない、本当にそこそこだ。
人よりは出来たが何事も一番じゃあなかったな。
まぁ、そんな事を気にした事はない。他人よりずば抜けた才能を持っている奴の方が少ないんだ。
顔は今見ると普通だと思うが、当時は自分の事をカッコいいなんて思ってた気がする…。
だけど、それも一番だと思った事はない。なんせ一番仲良くしてた友達『拓也』がめちゃくちゃイケメンだったからな。
今思うと、俺達は生意気なクソガキだった。
いらない事ばっかり思い出すな…。
あぁ、そうだった。彼女を初めて見た時は確か体育の授業だったかな。
今でも思い浮かぶ、女子の先頭で淡々とグラウンドを走っていた。
俺達男子はその後に走るから座って待ってたんだったか。俺は短距離だけはどうしても苦手だったから、それを見て羨ましいと思ったなぁ…。みんなの先頭を颯爽と走り抜ける、なんてカッコいい事だろうか。
「なぁ拓也、あれ誰だ?」
「ん?あれってどれよ?」
俺は先頭を走る女子を指差してもう一度尋ねる。
「あれだよあれ、あの先頭走ってる奴」
「あ~あ、アイツか」
「ん?知ってんの?」
「そりゃ幼稚園から親が仲良いからな」
「へー」
その時はそれで終わり。運動できる女子、それがあの子に対しての初印象だった。
小五の時、その子とクラスが一緒になった。
彼女の印象は俺の中に刻まれており、ちょっと興味があったんだ。拓也と話してる所に混ざる形でちょっとだけ話しかけてみようと思った。
でも、その子に対しては、言葉が出なかった。
咄嗟に言葉が出たのはナイスとしか言いようがない。
「あ…、おっ、おい拓也、早く外でドッチボールしようぜ!」
「おお!行く行く!」
俺はすぐにその子から目をそらした。
俺は初めて一目惚れした。
それからはずっと、前の席で授業を聞いてる彼女の横顔を見てた。後から拓也から聞いたが、あの子の名前は『莉桜』って言うらしい。
俺は悪ガキだったがシャイなガキだった。自分から何かしらのアクションを起こそうとか、そういった事は考えてなかったな。でも最悪なことに、拓也にはバレた。小学生特有の、「好きな人いるの?誰にも言わないから」っていうやつに嵌められてまんまと喋ったのが馬鹿だった。
まぁ言いふらされはしなかったが、よくからかわれたのは今でも記憶にある。
そうしてしばらくたった頃、給食配膳の時間だった。
莉桜に突然呼ばれた。
俺は突然呼ばれた事への驚きと、人目がある所で女子と喋る事への気恥ずかしさに囚われてた。
「…な、何?どうしたの?」
「…これ、優斗にあげる…お土産…」
そうして小さな赤い紙包みに入った何かを渡された。
「えっ!?くれるの?ありがとう!」
「うん」
それで会話は終わってしまったけど、少し話しただけで無性に嬉しかった。
家に帰って包みを開けると、ストラップが入っていた。俺は次の日からそれをランドセルに付けて毎日登校するようになった。
そうしてしばらくたったある日、拓也に映画に誘われた。正直恋愛映画に興味なんて無かったし、お小遣いをそんな無駄な事に消費してたまるかって思ってたけど、一緒に行くメンツを聞いた時、ついつい俺も行きたいなんて言っちゃったな。
俺と拓也に、莉桜とその友達の佳純という女子の四人。佳純とは仲が良かったし、ちょっと楽しみだった。
お土産をもらって以来話してなかった彼女に話しかけるチャンスだったから。
しかも、映画の前日、四人で佳純の家でハロウィンパーティーをする事になったんだ。
ハロウィンパーティー当日の13時頃、
俺は100均で買った簡単な仮装道具とお菓子をバックに詰め、自転車で佳純の家に向かった。
着いた時には拓也以外は集まっていて、薄暗い部屋で各々が仮装していた。
莉桜「わっ!」
俺「…」
莉桜「ちょっと~。少しは驚いてよー」
俺「いや、うーん…。わー驚いたー」
莉桜「何それ適当なんだどー(笑)」
俺「目の前にいて驚くわけないだろ(笑)」
角を生やし、目の下にキラキラしたシールの様なものを張り付けた莉桜がこちらを見ていた。
俺は視線を反らし、恥ずかしさを隠すように話していた。
俺「もうちょっと隠れるとかすれば良いのに」
莉桜「それ良いね~。拓也にやろうよ!優斗は何か仮装しないの?」
俺「持ってきたよ。……ほらこれ」
莉桜「可愛い~!早く着けてよ!」
俺は手に持った悪魔のしっぽをズボンに着け、槍?を手にもった。ハロウィンで仮装をするなんて初めてだった俺は結構恥ずかしかったのは内緒だ。
俺「ど、どう…?」
莉桜「ふふっ、似合ってるよ」
俺「…笑ったな?」
莉桜「笑ってないよ~」
俺「いーや、絶対笑ってる。てか、めっちゃ笑顔だし」
ピンポーン
インターホンが鳴った。どうやら拓也が来たらしい。
佳純が玄関に向かった。
莉桜「あっ、来たね。ほらほら早く隠れて」
俺「いや、どこに?」
莉桜「私物置ー!」
と言って彼女はさっさと、隠れてしまった。
ベットの下は思ったより狭いし、勉強机の下なんて丸見えだ。俺は仕方なくカーテンの裏に隠れた。
ガチャ
佳純「もう二人とも来てるよ」
拓也「まじかー?…おい」
べしっと、俺の頭が叩かれた。
俺「いてーな」
拓也「足見えてんだよ。もっと上手く隠れろよ」
俺「いやいや、どこに隠れろって言うんだ」
拓也「こことかあるじゃん」
拓也が物置をがらがらと開けた。
莉桜「あっ…わー!」
拓也「…」
莉桜は普段はクールなのに、実はちょっとお茶目さんだった。
ずっと君に言いたい事があったんだ… リュウガ @ryuuga105
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